北朝鮮のミサイルが北海道上空を通過してけたたましくJアラートがなり、さらに核実験までもが強行され、メディアが連日北朝鮮の脅威を報じたときに、これで安倍内閣支持率は上がるだろうと感じていました。やはり、そのとおりになったようです。NHKの世論調査では、安倍内閣を「支持する」が先月より5ポイント上昇し44%となり、「支持しない」は7ポイント下がった36%で、3か月ぶりに「支持する」が「支持しない」を上回る結果でした。調査方法から数字に違いがあるとしても各社の結果も似た傾向です。ただ想定していたよりも支持率上昇が少なかったと感じています。

ネトウヨメディアが喜々としてこのことを取り上げはしゃいでいます。支持率が低下したときは、メディアの内閣支持率が操作されている、陰謀だ、信用できないと馬鹿騒ぎしたことを忘れてしまったのでしょうか。彼らは、事実にもとづいて原因を考えるのではなく、自分の考えにそぐわないとことは、すべて間違っていると考えたいのでしょう。

なぜ北朝鮮の核ミサイルの脅威の高まりが、安倍内閣の支持率を押し上げるのでしょうか。外交・安全保障問題については、安倍内閣の考え方が一貫しているからです。緊張が続き、人びとに不安が広がると、必ずしも安倍内閣を支持しているわけでなくとも、大事なのは、脅威への備えを任せることができるか、あるいはそうでないのかと、人びとがどちらに気持ちが傾くかです。

そんな信頼感を生み出すのは、ぶれていないことです。なにか危険や不安を感じるなかで、それに立ち向かうリーダーの考え方が揺らいでいると思うと誰もついていきません。しかも、安倍内閣と異なる安全保障観、外交観を持った人たちからも、これといった説得力のある対案がでていないことも影響しているのでしょう。

逆のケースで思い出すのは、民主党時代に起こった尖閣諸島中国漁船衝突事件です。尖閣諸島付近で違法の操業をしていた中国漁船と、これを取り締まりを実施した日本の海上保安庁との間で起こった事件です。船長を逮捕し勾留したものの、中国政府の相次ぐ報復処置に揺らいだのか、中国人船長を理由も不明なまま、突然処分保留で釈放したのです。当時の民主党政権が、漁船衝突時の映像を公開しなかったことにも批判が集まりました。

事件が起こったのは2010年9月7日で、船長が釈放されたのが9月24日でしたが、当時の菅直人内閣の支持率の急落が始まります。事件前には65%にまで上昇していた支持率が、10月には48%に、さらに12月には25%にまで急落します。尖閣問題での一貫性のなさから国民の信頼を失ったのです。


安倍総理は外交でも成果をあげつつあるように感じますが、外交や安全保障は合格点としても、森友・加計問題での疑惑への対応はあまりにお寒いもので、それで失った信頼は一朝一夕には払拭できません。つまり、目立った成果を上げ続けなければ支持率が再び失速する可能性は残されているので、ぜひ身内ではなく、国民の利益につながる成果をあげていただきたいものです。