さまざまな業種で人手不足、またアルバイトやパートの時給高騰の悲鳴が漏れ伝わってきます。働き手としての労働力人口は少子高齢化の影響を受けて減る一方です。ただでさえ働き手が不足しているところに、わずかでも景気が回復してきた結果、アルバイトやパートの時給の高騰に拍車がかかってきています。
リクルートが、求人メディア 『TOWNWORK』 『TOWNWORK社員』 『fromA navi』に掲載された求人情報から、アルバイト・パート募集の求人情報を抽出し、募集時平均時給を時系列で調査していますが、とくに首都圏・東海・関西の三大都市圏の時給高騰が顕著です。


この7月度の集計では三大都市圏で、前年同月より23円増加の1,010円、2.4%増でした。まだ東海の平均時給は950円、関西が975円ですが、東海、関西も1,000円超えは時間の問題という感じを受けます。日銀による異次元な金融緩和でもインフレが起こらなかったのですが、もしかするとこのアルバイトやパート時給の高騰がインフレを促す要因になってくるかもしれません。

さて、人口が減ってもいいじゃないかと楽観的なことを考えている人もいらっしゃいます。そうであればいいのですが、現実は日本が社会を維持する負担に耐えられなくなってしまう事態がやってくることも否定できません。社会福祉費の現役世代への負担も重くなってきます。北欧とは違って、高負担低福祉という最悪の社会になってしまいかねないのです。

今も地方に行くとあちらこちらでバイパス延伸工事が行なわれています。今だけ見れば観光には便利になっていいのですが、過疎化がさらに進んで来ると、人はいないけれど維持のための経費はかかる、しかもそれを誰が負担するのかという状態がやがて確実にやってきます。

もちろん、それらを支えるだけの経済力を日本が維持していればいいのですが、人口減のなかで経済力あるいは社会の活力を維持向上できるのかというのはかなり疑問です。

もちろん、理屈では、経済力は、人口だけで決まるものではなく、生産性が高まればそれによって維持向上することができます。池田信夫先生がこうご指摘です。
過去100年で日本の人口は2.3倍になったが、GDPは35倍になったので、一人当たりGDPは15倍になった。この成長の最大の原因は、高度成長期までは資本蓄積だったが、1980年代以降は生産性の上昇だ。
問題は人口減少ではない:

しかし過去の歴史の話はさておき、現実は、移民によって労働人口が増加してきた欧米の先進国は経済成長を保っていて、労働人口が減少してきた日本は経済の活力も成長力も再生できず停滞が続いています。

人口減は国内市場を細らせ、企業の活力や成長の源泉を蝕み、しかも国際競争力も奪いかねないのです。労働力が不足している日本こそ、生産性を向上するイノベーションが次々に起こり、企業も積極的にそのイノベーションを取り込むことになりそうですが、やっと働き方革命に着手したばかりです

EU離脱交渉段階に入った英国で、メイ首相が移民の規制を強化しようとしていますが、経済界から警戒の声があがってきています。移民が減って労働力不足が起こると、経済に与える影響がいかに大きいかを素直に物語っているのでしょう。労働力不足を補うために、日本も研修生制度などの緩和拡充をはかり、在留外国人も、2016年末で238万人と前年比で6.7% 増加してきていますが、まだ需給ギャップを埋めるレベルには達していません。

アルバイトやパートの時給があがることで、消費にはいい影響がでてきますが、中小企業にとってはコスト増となり、経営を圧迫する頭の痛い話です。