昨日の北朝鮮の核実験は、北朝鮮の脅威が新たな段階に迫ってきたことを感じさせます。アメリカにICBMが届くようになるのも時間の問題でしょう。北朝鮮は日本を相手にしていませんが、日本はすでに北朝鮮の核攻撃の射程距離のなかに入っていると考えるべきです。また、ようやく日本にも安全保障のあり方について議論を深める必要性が迫られてきているように感じます。

 まだ経済制裁の圧力を加えればなんとかなるのではないかという楽観論を持っている人もいらっしゃいますが、残念ながら、これまでの経済制裁は全く効果がありませんでした。日本が防衛力を高めるといってもその限界も見えてきています。ICBMの完成を待つまでもなく、もし核弾頭を積んだノドンミサイルを日本に北朝鮮が本気で大量に発射すれば、いわゆる飽和攻撃をすれば、日本の迎撃ミサイルシステムでは対応出来ません。

それより心もとないのは、日本の安全保障の戦略が、日米同盟以外にはないことです。このままではいたずらに防衛費を増やすだけになってしまいかねません。

まだ核ミサイルによる米国攻撃能力が完成していなくとも、その完成が、間近であることは間違いないのでしょう。経済制裁と言っても、独裁王朝が生き残るためには国民の犠牲もまったくいとわない国です。金正恩体制そのものに直接効く制裁がなければ効果がないということです。また経済制裁で少々圧力を強めたところで、中朝間には穴があいており、ほとんど効果はなさそうです。

北朝鮮の狙いは、あくまで核を持ち、現実的に世界で戦争をしかけてきた米国を交渉の場に引きずり出すことなので、いくら韓国が軍事演習をしたところでなんの脅威も感じるわけがありません。あげくはならず者にふさわしく日本を恫喝し、警告を発してきています。中国が貿易制限を強めても、困るのは金正恩ではなく北朝鮮の国民です。

賽は米国と中国に、トランプさんと習近平さんに投げられた格好ですが、トランプさんはどうするのでしょうか。

トランプさんと金正恩さんのチキンレースはいまのところ、完全に金正恩優勢に進んでいます。このままでは、トランプさんは口先だけだという不名誉なラベルを貼られそうですが、トランプさんは、例によって、ついに北朝鮮の貿易相手国への制裁を口にしました。制裁に値する相手国とは中国で、名指しで中国制裁を口にしたも同然です。

中国に経済制裁を行うとは正気でしょうか。それはアメリカ経済も大きな犠牲を払う覚悟を持たないといけません。おそらく牽制球を投げ、かねてからの米中貿易不均衡を改善する程度の手ぐらいしか打てないのでしょう。現代は、それほどしか政治の力はありません。グローバル経済のなかでは互いに依存関係にあって、制裁を加えればブーメランのように矛先が自らに戻ってくる時代です。

中国としては、核実験は、BRICSの指導者との首脳会議開催のタイミングで、恥をかかされ、強い口調で北朝鮮を非難したものの、国内ではSNSで北朝鮮の核実験に関する書き込みを消しまわっていることが漏れ伝わってきているところを見ると、国内では事を荒げたくない、つまり本気ではないということかもしれません。あるいは対北朝鮮への外交政策の失敗への批判が高まることを恐れているのかもしれません。

中国の出方を見るしかない状態のなかで、中国が本気で制裁にでなければ、北朝鮮の暴走を止めるプレイヤーがいないということになります。そのことを北朝鮮は読んで、好き勝手しているという感じなのでしょう。

さて北朝鮮が核武装している現実、まもなく米国本土にもその脅威がおよぶ時代になると、なにが変わるのでしょうか。アメリカの核の傘が信頼できなくなります。もし核を使ってその報復で自国に多大な被害が及ぶ事態に、アメリカが頼りになるかはかなり怪しくなってきます。

そんななかで日本が選択できるのは、自ら核武装するか、あるいは日米安保の限界を容認しつつ現状維持するのかです。現状を維持しながら北朝鮮との対話の糸口を探るか、洞ヶ峠を決め込むのかです。

日本の核武装は、日米安保のあり方を大きく変えますが、現実的ではありません。実際、日本の核武装は非現実的だというだけでなく、きっともっとも愚かな選択でしょう。核武装化するためのリスクをクリアできるのかが問われてきます。

米国の出方はわかりませんが、中国もロシアも、日本の核武装を容認するわけがありません。日本が、いまだに国連の敵国条項に入っていることを忘れてはならないのです。日本の核武装化は日本が北朝鮮と同じような軋轢を世界から受ける覚悟をする必要がでてきます。中国が我が意を得たりとばかりに日本非難を行い、日本制裁を持ち出すことは容易に想像できます。

北朝鮮への経済制裁に中国という穴がある以上、米国の軍事攻撃でしか、現在以上の圧力は期待できませんが、中朝間の石油パイプを爆破すれば、制裁効果もでてくるのかもしれません。

そのような軍事作戦がとれないとすればければ、非公式にでも北朝鮮を核保有国として認め、米国が対話のテーブルにつくことが現実的な話ではないでしょうか。残念がらそのテーブルには、韓国にも日本にも席はなさそうです。それも日本自らが、対米従属の道を選んできたのでしかたありません。

日本は安全保障問題を長年タブーにしてきましたが、もうそろそろ国民がどのような道を選択するのかを決めるタイミングに来ているのではないかと思います。今のように米国依存以外の戦略が欠けたままに、改善策のように断片的に軍事力強化だけが議論されるのはちょっと危ういと感じます。


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