昨日は混雑を避けながら、京都の日本海側の舟屋が並ぶ伊根町から 、丹後半島の先端、近畿地方の最北端にある経ヶ岬(きょうがみさき)を通るコースをドライブしたのですが、経ヶ岬と聞いて何が思い浮かびますか。一帯は、「丹後天橋立大江山国定公園」に指定されている風光明媚でのどかな地域です。
経ヶ岬という場所は地名も聞いたこともないという方が多いとは思いますが、灯台、リアス式海岸の断崖絶壁、そこに生息するはやぶさ、そして袖志の棚田があり、とくに写真好きの方には馴染みの場所かもしれません。このブログでも以前、伊根町の舟屋と経ヶ岬灯台の写真をアップしています。
大西 宏のマーケティング・エッセンス : 丹後半島 : 
その袖志の棚田の近くに行くと、風光明媚な風景とは似つかわしくない巨大な通信施設が見えてきます。航空自衛隊経ヶ岬分屯基地に隣接した米軍基地の経ヶ岬通信所です。そこにはマイクロ波を使用したミサイル防衛用早期警戒レーダー、通称Xバンドレーダーが配置され、2014年から運用されています。

まさに、今、問題になっている北朝鮮によるグアムに向けた中距離ミサイルの発射を監視し、追跡する設備です。中国も監視範囲に入る高性能なレーダーですが、あまりに電波が強力なために健康被害も懸念されているようです。日本にはもう一基、青森にもハワイ方面に向けたミサイルの監視追跡のXバンドレーダーがあります。

これだけ聞くと、結構、備えが進んでいるというようにも思えますが、韓国で賛否で国論を二分する議論が起こっている高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)の要となる通信施設そのものです。

さて、小野寺防衛相が、もし米領グアムを狙って弾道ミサイルを撃った場合、集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」に認定し、自衛隊のイージス艦が迎撃することは法的に可能だとの認識を示されましたが、その発言には疑問を感じます。

日本をあえてエスカレートし続けるトランプ対金正恩のチキンレースに巻き込むような発言だからです。

小野寺防衛相のこの発言に、北朝鮮の報道官が、「日本列島を瞬時に焦土化できる」と警告する声明で反応してきています。ワシントンポストが、米国の情報機関は、すでに北朝鮮は核弾頭の小型化に成功したと見ていると報じたようですが、それが事実なら、日本はすでに北朝鮮の核攻撃の射程に入っている可能性が高く、荒唐無稽な話ともいえないのです。

島根、広島、高知を通過させるということなので、迎撃ミサイルPAC3などの配備を変え、いざという場合に備えた動きは当然としても、あえてトランプ対金正恩のチキンレースに加わる必要はありません。北朝鮮の恫喝に対抗手段があれば別ですが。

しかも、実際に迎撃ミサイルを発射できるのかです。

同時に発射された4基を100%撃ち落とせるのなら、撃つなら撃って見ろと威勢よく言ってもいいのでしょうが、迎撃ミサイルを実際に発射することは、その精度や性能が北朝鮮にも、中国にも見せてしまうということです。もし、一基でも撃ち落とせなかったとすれば、迎撃ミサイルは能力がないことになり、素人が考えても抑止力を失います。

つまりPAC3は実際には、日本本土に危険が生じるような、よほどの事態でない限り発射できない、天下の宝刀は抜けないはずです。

また、北朝鮮の今回の恫喝が、その事態かというとかなり疑問です。そもそも、グアム基地そのものではなく、「近辺」と言っているものを、「存立危機事態」とするのは無理があり、それは北朝鮮へのいらぬ挑発でしかなく、防衛相としてのセンスを疑います。

小野寺防衛相はいかにも誠実な方に感じますが、駆け引きの計算ができないとすれば、防衛相は適任とはいえないのではないでしょうか。

もし安倍総理が、小泉元総理がやったように、北朝鮮に乗り込み米朝対話への道を切り開くような鮮やかなハプニングができれば別でしょうが、北朝鮮の核ミサイル開発に対しても、互いに核を持ちながら子供のように応酬し合うチキンレースに対しても、日本が解決に向けてできることは限られているのでなおさらです。

国内向けの政治的な発言かもしれませんが、リスクを高める無用な挑発は避けたほうがいいと思います。安全保障に関しては、勝てない喧嘩はしてはいけないのです。