都議会選挙で、自民党歴史的な敗北、まるでフランスの国会議員選挙で起こったエマニュエル・マクロン大統領の新党「共和国前進」の大勝利を彷彿するような「都民ファースト」の大躍進となりましたが、大阪につづいて、首都圏でも、地域政党が自民党支配体制を崩壊させたことになります。そして、世論調査で、安倍内閣の支持、不支持が逆転しましたが、今回の東京都議会選挙の結果で、安倍内閣がさらに揺らぎはじめることは容易に予想されます。
安倍内閣にとって危機的なのは、実際は安倍内閣は、政策で大きく失敗したわけでもなく、働き方改革や、教育重視など日本にとって重要で必要な政策を掲げているのですが、政策の是非でなく、その体質への国民の不信感から揺らぎはじめてきたことです。

マーケティングの現実は、いくら消費者のひとたちに理屈を並べ釈明してもその商品やサービスを選んでいただくことはできません。理屈を超えた感動や共感で絆ができたときにはじめて買っていただけます。逆に生理的な嫌悪感、品質への不信感を持たれることほどやっかいなものはありません。

安倍内閣は大きな思い違いをしていたように思われます。「一強」という言葉に惑わされてしまったのか、支持の構造を見誤ったのです。

安倍内閣の高い支持率は、野党、とくに民進党の戦略不全と戦術センスの悪さによる迷走と自滅の結果でした。政治こそマーケティング発想が求められますが、ほんとうに信じがたいほど連続して失敗してくれるので自民党も安倍内閣も安泰だっただけで、熱狂的な安倍応援隊以外の多くのひとびとは、もろ手をあげて支持していたわけではありません。つまり国民の共感を得る努力を続けなければいつ何時足元が揺らいでもおかしくない基盤の上に立った「一強」だったのです。

しかも安倍総理は、自らのネトウヨ的な心情を抑え、現実に向かい合ってきたことで、国民のなかに大きな対立をつくらなかったことが、高い支持率に繋がってきました。靖国参拝も、中国や韓国だけでなく欧米が不快感を示したことからその後は控えたことがそれを物語っています。

しかし、結局はお仲間人事、政策の美名に隠れて、お仲間への利権供与があったのではないかと疑われてしまったのです。また森友学園、加計学園問題で、安倍内閣が自らを守るために、信じがたい情報隠しを行ってしまったブーメランは、「THIS IS 敗因。Tは豊田、Hは萩生田(はぎうだ)、Iは稲田、Sは下村」 と揶揄される不祥事や疑惑がさらに威力が増し、それでなくとも、舛添都知事問題、利権体質への疑惑などで守りに入っていた都議会自民党を襲ったのです。

また国会で維新の足立議員が、恥ずかしいほど品位に欠ける口調や態度で安倍内閣のボディーガード役を演じてしまったために、その竜巻に巻き込まれようやく1議席を確保するのがやっという結果でした。

そして、この状況を読めず、安倍内閣批判しかできなかった民進党は、ようやく5議席をとるにとどまっています。執行部の問題なので、志のある民進党の先生方は、この泥船から抜け出されたほうがいいのではないでしょうか。

この自民党の敗北をつくったブーメランは、まるで台風のように国政に戻り、安倍内閣を襲い始めます。うまくかわさなければ、命取りにもなりかねません。自民党党内部の不満を、あるいは、次の選挙への不安を払拭して、この危機をうまく乗り越えれば、また安倍内閣への評価が戻ってくるのかもしれません。

さて、今回の都議会選の成果は、都民の人びとでなく、全国の多くの人びとの地方政治への関心がに高まったことだと思います。同日の行われた、兵庫県知事選も、現職の井戸知事の5選の是非しか争点のないような選挙にもかかわらず、投票率は40.86%で、知事選単独では35年ぶりの40%台回復でした。

今日の日本の経済や社会の停滞、またさまざまな問題は、発展途上国型の中央集権体制では解決できない限界に達していると思っています。もう現代の複雑さに日本の官僚主導体制、また中央政府が金をばらまくことでは対応ができなくなってきており、現場ニーズに近く、柔軟な解決ができる地方主権化が大きく鍵を握ってきているのではないでしょうか。地方政治、地方経済への関心が高まり、また地方政党が生まれることで、地方主権の時代への流れが促進されてくることに期待したいものです。