報道系ベンチャーのJX通信社が6月17・18日の両日に実施した東京都内での世論調査で、各新聞社の読者別に安倍内閣支持率を集計しています。ほんとうに見事なほど、各新聞の読者の特徴が結果にでています。産経新聞読者の支持率はなんと脅威の86%で、その真逆なのが東京新聞読者では不支持率がなんと77%に達し、支持率は気の毒になるぐらい低い5%です。
内閣支持率というよりは、各新聞社の読者層の価値観や意識の違いがこれほど鮮明にでたのは見事というしかありません。そして、産経と東京新聞という発行部数ではマイナーな新聞の生存戦略としては、両極の読者を取り込んでいくということに成功していると言えそうです。

とくに、産経新聞は2016年後期の発行部数が158万部で全国紙のなかでは読売、朝日、毎日、日経に続く第5位です。発行部数としては毎日新聞のおよそ半数強でしかありません。しかし、毎日も産経も、いずれもが基盤が弱く、2007年以降は減少幅が大きくなってきた傾向が見られます。なにかユニークな特徴がなければ、まして新聞そのものが衰退してきているなかでは、生き残りの戦略や知恵が必要になってきます。

日経は経済紙というポジショニングで差別化しています。普通に考えると、総合紙のなかでシェアが低い産経新聞は、新聞不況の煽りを受けやすいはずです。ところが、2016年後期の発行部数で前期よりも伸ばしたというよりも歯止めが効いたのは唯一産経新聞でした。

極めてニッチな層をしっかり捉えているからです。地域的には競合の激しい関東は弱く、発行部数を稼いでいるのは圧倒的に近畿です。たとえば関東1都6県の朝刊発行部数は58万部ですが、近畿2府5県では82万部です。関東では、読者の内閣支持率が5%だったという東京新聞は49万部なので、産経と東京新聞が両極のニッチを抑えているということでしょうか。

産経新聞は、見事に安倍内閣支持層を捉え、東京新聞は逆にアンチ安倍内閣をとらえています。弱者の戦略としてはどちらもかなっているといえます。そう見れば、産経が長期的には凋落してきたにもかかわらず、昨年は凋落に歯止めがかかったのは安倍内閣の高い支持率を追い風にしたのでしょう。

新聞やメディアは、それぞれのスタンスがあり、それを追求することで特徴がでてきます。「公平」という幻想でごまかすのではなく、逆に立場を明確にして、主張を明確にしたほうが健全ではないかと思います。その意味では、産経と東京新聞が競い合う構図というのも面白いのです。いろいろな見方、いろいろな価値観がある、そこから出発すれば、もうすこし日本も自慢できる民主主義の国になっていくのではないでしょうか。仕事柄、違った新聞の双方の記事を読む習慣がついていますが、たまにはいつもと違う新聞記事を読んで見られることをおすすめします。