といっても、最も高かったスタートでさえ39%、末期には7%にまで落ちてしまった森内閣と比べれば、まだまだ立派な支持率とはいえ、土日に行われた朝日新聞調査、読売新聞調査いずれの世論調査でも安倍内閣支持率が急落しています。予想した通りの結果でした。しかも、今回の支持率の下落は、いくら国会を閉じても引きずりかねない負の流れの結果であり、東京都議会選への影響、さらに東京都議会選の結果によってはさらにその影響が拡大しそうです。

朝日新聞の世論調査では、安倍内閣の支持率は、前回(5月24、25日実施)の47%から41%に、不支持率が31%から37%に上がっています。読売新聞の世論調査では、前回調査(5月12〜14日)の61%から、49%に、不支持率は28%から41%に上昇しました。


こういった調査で、調査によって、数字が異なってくるのは操作しているからではなく、質問の順序やどう質問したかなどで違いがでてくるのはある意味で常識で、重要なのは変化があったのかということと、どのような状況のなかで、なぜ変化が起こったのかです。

朝日新聞が記事のなかで、指摘しているのは、全体のほぼ半数を占める無党派層の支持率はなんと19%と2割を切り、不支持率は49%にのぼる逆転現象が起こっていること。また、女性層も、支持率が 36%と低く、不支持率の38%と拮抗していることです。おそらく安倍内閣の信者の人や支持者の人の目には、見えていないことが起こっているのです。

これまでも、特定秘密保護法成立時、集団的自衛権の限定容認の閣議決定時で、支持率が下がり、不支持率が上がり、さらに安保関連法成立時には支持と非支持が逆転したことはありました。

しかし今回は、国民にはよくわからない共謀罪を「テロ等」の冠で誤魔化し、強行採決してしまった国会運営だけでなく、森友学園問題に引き続き発覚した加計学園問題で見せた権力に逆らうものは、情報操作まで行って攻撃する体質、平気で嘘をついて、情報隠しを行う体質への不信感や嫌悪感が根付いてきているところがこれまでとは大きく異るところです。

信用できなくなったのです。浮動層、女性層での結果はそれを感じさせます。

法案の賛成か反対かでは、喉元過ぎればということも起こってきますが、不信感、あるいはマイナス感情を持つと、すぐさまには態度が変わりません。竹下内閣や森内閣の結末がそうだったようにです。

どなたかが内閣支持率と東京都議会選は違うとおっしゃっていましたが影響は避けられないでしょう。自民党という看板が追い風なのか、逆風になるのか、各候補者は戦々恐々としているはずです。浮動層や女性票の結果を見れば、もし都議会選に菅官房長官が看板として姿を見せれば、それは逆風を強化することになりかねません。

ところで、読売グループが一体となったの加計学園問題の情報操作が止まりません。しかもどんどん巧妙化してきています。森友学園問題と加計学園問題は似た構図、安倍総理や総理夫人との深い関係、さらには日本会議につながる構図で発生した案件です。それを切り離し、規制緩和を行おうとした官邸とそれに強く抵抗した文部科学省というシナリオにもちこみ、安倍内閣への不信感を晴らそうという作戦のようです。

官邸からのリークとしか思えないタイミングで、前川前次官潰しを目論む記事を一面に掲載し、さらに前川前次官の記者会見で読売の記者が「守秘義務違反では?」とまるで脅迫するかのような質問を行いました。権力に逆らうものは脅し、抹殺しようとでもいうのかと思わせる読売ですが、さらにグループが気持ち悪いほど同じ方向を向く体質には不気味さを感じます。

ブロゴスの文春オンライン記事で、池上彰さんがその点に触れていらっしゃいます。主筆が、政敵を徹底して粛清した独裁者スターリン時代の共産党員だったことは広く知られていることではないでしょうか。
 他の新聞社だと、社の「方針」があっても、個々の記者は自由に取材できますし、取材した内容は、事実関係に間違いないかぎり、そのまま掲載されるのが普通です。
 
ところが読売新聞は、編集方針を決める最高責任者である主筆が、毎週のように幹部を集めて「方針」を伝達します。すると、次に幹部たちが部下たちを集めて「方針」を伝達するのです。

この方式は、常に党員の思想を統一しておこうという共産党の手法そっくりです。読売新聞の主筆は、かつて東京大学の学生時代、日本共産党の党員として活動していました。若い頃に身についた手法が、いまも生きているのだなあと感心します。

 この結果、読売新聞社内では、記者たちが「空気を読む」のだと、以前、ある現役の読売新聞記者が私に教えてくれました。

さて読売の政権擁護キャンペーンがどこまで効力を発揮するのでしょうか。官邸からの情報に頼り、同じような記事しか出せない新聞よりは週刊誌のほうが切れのある記事を出してきていたり、天下の読売も、発行部数が名目でも900万部を割ったような状況を考えると、かつてのような影響力はもう失っているのではないかと感じます。

おそらく自民党支持層を固めることはできたとしても、浮動層が抱いてしまった不信感を晴らすことはできないと思います。