国民のなかに閉塞感が広がり、既存政党には、その状況を変える期待が持てなくなってくると、国民のなかには、改革を推進できそうな新しいリーダーを求める動きが生まれてきます。アメリカ、フランス、韓国の新しい大統領誕生の背景に共通していることです。

グローバル経済とローカルの国家の間に生じてきたさまざまな葛藤に対する処方箋がないままに、各国でグローバル経済に反発するナショナリズムを生み、ポピュリズムによって広がってきたわけですが、アメリカのようにその流れから、フランスのようにその反作用から、異色の大統領が生まれてきました。韓国も、経済は財閥の輸出産業への依存度が高く、企業は繁栄しても、国内は若い世代の高い失業問題を抱え停滞しており、その閉塞感が新しい大統領を生んだのでしょう。 

しかし、アメリカもフランスも韓国も、新たなリスクを負うことになりました。国会での支持基盤が弱く、国会の承認を得るハードルをどう超えていくことができるのかです。下手をすると何も政策が実行できず、これまで以上の政治停滞を生んでしまうかもしれないのです。

トランプ大統領は、民主党と対立しアメリカを分断してしまっただけでなく、共和党の主流派からもかならずしも支持されているわけではありません。フランスのエマニュエル・マクロン大統領の誕生を支えた政治運動「前進」は1年余り前に始まったばかりで議会で議席を持っていません。昨日誕生した韓国の文在寅大統領も、「共に民主党」が国会の定数300に対して120議席しかなく、新政府の人事や法案の処理も野党の同意が不可欠です。

トランプ大統領はその先例です。指名した閣僚候補が議会上院の承認を得られないために人事で迷走をつづけ、「就任100日」前にようやく顔ぶれが揃ったという状態です。しかし、現実は海軍・空軍長官をはじめ、さまざまな高官ポストがいまだに正式には決まっていません。
選挙公約に掲げていたオバマケア(医療保険制度改革法)の廃止についても、ようやく連邦下院で新しい改廃法案を217対213の僅差で可決しましたが、「トランプ大統領にとっては政権発足3カ月を過ぎて、初の大型法案での勝利(BBC)」です。

事情は異なりますが、それぞれの大統領の今後に重なって感じてしまうのが日本の民主党政権です。リーダーの資質、とくに統治で国民からの信頼を失い、最後は野田元総理が突然政権の座をあっさり放棄してしまい、今や民進党と名を変えたものの迷走が続いています。

これといった政策が実現できず、国内の閉塞感を解消できなければ、やがて民主党政権と同じような道を辿り、やがてその反動がやってきそうです。しかし焦点は、ビジネスにもイノベーションが求められているように、政治の世界もグローバル化の時代をうまく取り入れ、ローカルを豊かにする政治のイノベーションが求められているように感じてなりません。

すくなくとも、既存の政治思想は通じないことだけは明らかなので、時間はかかっても新しい潮流が生まれてくる、あるいは育てることが必要なのでしょうね。