モスバーガーが、バイトの確保が難しくなったために、全国のモスバーガーの一部店舗の開店時間を1〜2時間遅らせるそうです。ヤマト運輸はアマゾンの当日配送の中止の検討をはじめ、また再配達受付時間の午後8時から7時への繰り上げや6月から正午〜午後2時の配達指定時間を廃止、さらに通販業者に運賃の値上げ要求や取り引き辞退の動きを行っているなど、人手不足の影響が表面化してきました。
実際には、海外からの「研修生」や「留学生」で凌いでいる事業者が増えてきていますが、人手不足が日本の経済に影響を及ぼし始めています。ちなみに 在留外国人は増加してきており、2015年末で223万人に達しています。
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ドラッカーが「人口動態ほど確実にやってくる未来はない」という名言を残しています。今は、復興需要、オリンピック施設建設などの需要増による建設・建築現場の人手不足、工場やサービス産業の現場での人手不足が深刻化してきていますが、それ以外でも、すでに「働き手」の不足の影響を受ける企業が増えてきています。今後の人口動態を考えると、成長戦略どころか、経済の縮小を覚悟するのか、あるいはなんらかの対策を行うのかの決断が迫られてきているのでしょう。

この前、関西ローカルのテレビ番組で、いかにも胡散臭い、自称保守の学者さんがノーテンキなことを言っていました。実業の経験もなく、またビジネス界との関わりも薄いからか、労働人口の不足は人工知能が解消するから問題はないとの主張でした。よくありがちな希望的な観測というか錯覚です。

3Dプリンターでなんでもつくれるようになるといった誤解と似ています。人工知能がいくら発展しても、人材不足は解消しません。人が実際に動かなければならない仕事のほうが遥かに多いからです。

保守論壇の「正論」も、移民政策へのアレルギーや不安を煽るだけで、建設的なアイデアが見当たりません。「保守」も感情論でしかなくなるとそうなってしまうのでしょう。

欲しいのは人数というよりは人材だという考えは基本的に正しいとしても、その人材も日本に残るメリットがなければ、出稼ぎで来ている労働者と同じです。Win-Winの関係を築くことが求められます。

早いか遅いかは別にして、なんらかの対応をしなければやがて、日本の社会を維持することも難しくなってきます。企業は、労働生産性をあげる、過剰なサービスを止める、さらに海外から労働力を得る。国内から海外に事業をシフトするなど、さまざまな対策を講じてくることは間違いありませんが、労働人口の減少は税収減にもなり、それを補おうとすれば、高負担・低福祉国家の道をまっしぐらという可能性もでてきます。ただまだまだ打つ手はいくらでも残っているので、しっかり議論していくことが大事かと思います。

安倍内閣は一応は海外からの人材導入を掲げていますが、自然増に任せるのか、あえて長期的な景気後退の道を選ぶのか、日本が本当に必要な人材確保にむかう戦略を持つのかの選択も迫られてきているのだと思います。