そんな可能性が高まってきています。シリアでアサド政権がほんとうにサリンを使ったのか、偽装なのかは知るよしもないのですが、事実は米中首脳会談のさなかに、イージス駆逐艦から59発ともいわれるトマホーク巡航ミサイルが発射されことです。そして中国が北朝鮮の暴走を止めなければ、米国がやるとトランプ大統領が公言したことでした。

トランプ政権は始まったところから、終焉に向かっています。なぜなら、トランプ政権が売り物として掲げている政策は、米国内では感情的には共感する人が多くても、整合性がなく、また実行できる可能性も低いからです。

実際、入国制限は修正を行っても司法から差し止められ、肝心のオバマケアの代替案も与党共和党の支持を受けられず撤回、また減税も怪しくなってきました。公約が実行できないとなれば、なにも実行できない政権として信頼は低下し、支持率も下がってくることは目に見えています。ロシアとの関係の不透明さもマイナスになってきます。

最新のある調査では、トランプ大統領の支持率は34%で、3月の44.1%から10.1ポイントも落ち、大統領の仕事ぶりを支持しないとした回答が56%で過半数を超えたといいます。トランプ支持者のトランプ離れが起こってきているのでしょう。
 
トランプ政権にとって、こういった状況を打破するには戦争が有効な手段になってきます。そして、ツイッターで「中国が(米国への)支援を決断するのであれば素晴らしい。そうでないのなら、われわれは彼ら抜きで解決する」と宣言したことは、もう後戻りできない状況をトランプ大統領自らがつくったということになります。

もし、北朝鮮が国連安保委で禁止している核実験なり、ICBMや中距離ミサイルの発射実験を行っても、中国は友好条約を結んでいるので、強い制裁行動を行なえません。米国が放置し、軍事的制裁を行わなければ、トランプ政権は、口先だけ、ビッグマウスにすぎないという評価になり、失速しかねません。

そして、対シリアと比べて、北朝鮮を取り囲んだ軍事網は比較ならないほどの規模だといわれています。斬首作戦などの軍事訓練が流されたことも、いざとなればやるという北朝鮮への圧力なのでしょう。

現代は先進国間では、ひとつは核抑止力によって、それ以上に経済がグローバル化したことで、資本、また産業、情報や人材が国境を超えて成り立っているため戦争が起こせなくなっています。しかし、米国にとっても、中国にとっても、いや韓国にとっても北朝鮮はその枠組みから外れています。北朝鮮の脅威は、北朝鮮がこの世界の安定装置としての枠組みから外れているので、なにをするかわからないことです。
しかし、韓国に戦闘が広がり、韓国経済に致命的なダメージが生じるリスクさえクリアできれば、条件は整い、少なくともお灸をすえる程度の制裁なり、見せしめ程度の軍事力行使はできるのではないでしょうか。
 
こうやって考えていくと、もし北朝鮮が挑発的な行動を行えば、なんらかの軍事的行動をトランプ政権がしかける必然性は否定できなくなってきます。日本のメディアは、ソフトな表現で報じていますが、実際のところ「米国、日米協議で対北軍事攻撃の可能性に言及」という韓国メディアの表現のほうが近いのではないでしょうか。
 

韓国では、すでに世論が動きはじめ、北朝鮮との対話推進を標榜する最大野党「共に民主党」の文在寅前代表の独走態勢が崩れ、野党第2党「国民の党」の安哲秀前共同代表の支持率がトップになったと報じられていますが、「太平の眠りを覚ます上喜撰たった4杯で夜も眠れず」なのでしょうか。

ちなみにテレビ報道で、なにを根拠にしているのかを示さず、あたかも北朝鮮の軍事力が日本や韓国を上回っているようなことを言っていた番組がありました。韓軍事力ということでは、 軍事分析会社グローバル・ファイヤーパワー(Global Firepower)の「世界の軍事力ランキング2016年版」の総合指標での評価がありますが、それによると北朝鮮は25位、韓国が11位、日本は7位です。トップはアメリカというのは言うまでもないことです。過大評価も過小評価も選択を間違うことにつながるので、冷静に判断しておきたいものです。