ヤマト運輸の値上げも、職場の悲惨な状態が伝えられ、それを改善するにはしかたないかというムードが広がっていますが、ちょっと待って欲しいのです。この値上げ問題に、菅官房長官が、アベノミクスの成果で「物流の流れが激しくなってきていることの一つの証左だと思う」とおっしゃっていたようですが、牽強付会もいいところです。消費支出は11ヶ月連続で減少。素直に考えれば、たんにEコマースの利用増で荷物が急増してきただけのことです。

この問題はメルマガで取り上げましたが、なぜ残業に頼らなければならない状態に陥ってきたのか、またなぜ佐川急便はアマゾンの宅配から手をひいたのでしょうか。

背景にはネット通販の利用の伸びがありますが、さらにネット通販企業間で即配競争が起こり、ネット通販の伸びや競争が消費者に荷物を届けるラストワンマイルのキャパシティを超えてしまったのです。

では、人を増やして宅配のキャパシティを増強すれば解決しそうですが、そうはいきません。日本の現場は恐ろしいほど人手不足なのです。おそらくこのブログをご覧になる方には実感がないかもしれませんが。宅配料の値上げで、給与条件をあげても、厳しい状況だと思います。

繁忙期になると、ヤマト運輸では、以前よく来てくださていた懐かしいベテランの人たちがオフィスに荷物を届けにきます。定年退職組がかりだされるのだそうです。ヤマト運輸も当然、外国人労働者に頼っています。しかしラストワンマイルの配達は日本語は話せる日本人になってしまうのです。日本は多くの産業の現場で、もはや外国人労働者なしには、仕事が回らない状態になってきています。それが現実です。現在日本に長期滞在している外国人は2016年6月現在で 230万人に達していますが、さらに増加していきます。

値上げよりもっと有効な改善策は、現場の大きな負担になっている再配達を減らすことです。ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便の3社が実施した調査によると、再配達率は平均で19.6%だそうです。国土交通省の試算によれば、宅配便配達の走行距離の内25%は再配達のために費やされており、一年間に、年間9万人の労働力に相当する約1.8億時間が1年間の不在配達に費やされているとしています。

再配達を劇的に減らせば、かなり改善効果は大きいはずです。

パナソニックが宅配ボックスを設置した実証実験を行い、49%だった再配達率が8%になったということですが、設置できる家庭は良いとして、後付で設置できる家庭がどれくらいあるのか、また費用負担してもらえるかどうかを考えると効果は限定的です。

それよりも、もっといいアイデアをかつては通信社の記者で、現在は中国・上海在住のブロガーの花園 祐さんという方が、見事な解決策を記事にしておられます。

答えは簡単です。

中国ではあたりまえだそうですが、できるだけ職場で受け取るのです。


日本では職場だけでなく、コンビニ引き取りや、配送所での引取り指定でもいいのではないでしょうか。それを促すインセンティブをとりいれればいいだけだと思います。再配達をなくす工夫をしている利用者と、幾度も再配達する利用者の配達料金が同じというのは考えれば合理的ではありません。私自身もネット通販の利用がかなり多いのですが。すべてオフィス受取にしています。だから自分で注文したものは、ほとんど再配達はありません。

再配達をなくそうとしている利用者と、幾度も再配達する利用者の配達料金が同じというのは考えれば合理的ではありません。

昼間に自宅に受け取る人がいる家庭はどんどん減ってきています。再配達をなくす有効でシンプルな最善の方法のように感じます。自宅への再配送があった場合は別途料金をとり、コンビニや職場受取をPRしていけば再配達撲滅へむかって事が動いていく可能性を感じます。