ネット通販は順調に伸びつづけていますが、荷物を自宅に届けるラストワンマイルがボトルネックになってきています。とくに成長が著しく、昨年も日本での売上が前年の30.8%増で、一兆円を超えたアマゾンの宅配を請け負っているヤマト運輸が、人手不足もあって、ブラック化してきていると言われています。
通販各社としては、すぐに届くサービスが差別化につながるために「即配」も競争の焦点になってきています。ヨドバシは、最短2時間半で届ける「ヨドバシエクストリーム」をスタートさせていますが、ドン・キホーテも最短58分で商品を配送すると発表していました。かつてはアスクルの「翌日に商品が届く」仕組みに驚いたものですが、さらに通販の物流システムが進化しつづけるスピード感には目を瞠ります。

ヤマト運輸は悪化してきた労働環境の改善のために、2017年度の残業時間を1割減らす方針だといいます。荷受けの総量を抑制する値上げや配達の時間帯指定の廃止を検討し、また宅配ロッカーの整備などを推進し、消費者への影響を抑える手法も探っていくようです。

ヤマト運輸の惨状は、潜入取材経験のある記者の記事が文春オンラインに載っていますが、「このままの労働環境では、物流崩壊に至るのは間違いない」というのも真実味を帯びています。

アメリカの場合は都市中心部から離れた住宅に荷物を届けるラストワンマイルの非効率を解決しようと、アマゾンはドローンの活用に熱心ですが、日本の場合は、むしろ再配達するムダをどうなくすのかほうが重要な課題のように感じます。ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便の3社が実施した調査によると、再配達率は平均で19.6%だそうです。

国土交通省の試算によれば、宅配便配達の走行距離の内25%は再配達のために費やされており、一年間に、年間9万人の労働力に相当する約1.8億時間が1年間の不在配達に費やされているとしています。無駄というだけでなく、大きな社会的損失です。

宅配ボックスを設置すれば、再配達率が49%から8%に減少するという実証実験もあるようですが、マンションの宅配ボックスならやりようによっては、設置促進をはかることができるとしても、現状では、いったいどこに設置するのかという問題が残ります。

宅配ボックスだけでなく、他にももっと良い解決方法があるはずです。

ヤマト運輸はラインと組んで、荷物のお届け予定やご不在連絡の通知が受け取れるサービスを行っていますが、この仕組がまだまだ進化していく可能性を感じます。

受け取る際の、情報の流れを変えるということも考えられます。いずれにしても、ユーザーと宅配の会社とネット通販企業の三者がWIN-WINの関係が望ましいことは言うまでもないことです、

運送会社が、「不在かどうかもわからないところに届ける」から、「受け取る人が自宅にいるかどうかを確かめて届ける」仕組みです。確認は、人がやらなくとも、かなり自動化できるはずです。

第二に、荷物がセンターに入った時点で、ユーザーのスマホにプッシュで告知し、ユーザーが指定した時間帯や届け先の近くのコンビニに届ける仕組みもで考えられます。不在がわかってからの連絡では、無駄が生じます。

第三に、再配達があった場合に、ネット通販の会社に費用負担させれば、ネット通販の会社が再配達を防ぐことに神経を使い、工夫してくるのではないでしょうか。

他にも、もっといいアイデアがあるような気がします。なにせ問題が明確だから、アイデアも生まれやすいはずです。

ラストワンマイルがボトルネックになっているということは、そこにイノベーションの機会もあるというとです。今頃カンのいい会社がそのチャンスを狙っているかもしれませんね。