金正男暗殺という衝撃的な事件が起こりました。ほんとうに嫌な事件です。工作員の犯行と明らかになれば、新たな展開が起こってきそうです。

独裁者金正恩の狂気、脅威となる存在を抹殺する執着心の異常さには、あっけにとられます。後先を考えないで、狙った敵を粛清する、暗殺することに異常に執着することは、どの独裁者にも共通していることかもしれません。かつて、ソ連のスターリンも、自らの地位を脅かしかねないトロッキーを、亡命先のメキシコに刺客を送り暗殺しています。
あきらかに、この事件は北朝鮮の国際的なイメージを致命的に悪化させます。にもかかわらず、犯行に及んだのは、後継者問題を決着する目的以外にも、なんらかの背景があったとも考えられます。

それを紐解くには、この事件でもっとも不利益を被ったのはどの国なのかを考えれば見えてきそうです。

あきらかに中国です。中国は、金正男をこれまで賓客として保護してきたことが知られていますし、今回も中国のマカオに向おうとしていた金正男が暗殺されたとなると、習近平の顔に泥を塗るに等しいはずです。

ミサイル実験、金正男暗殺と、連続して中国を挑発するかのような行動に走ったのも、おそらく、強硬なトランプ政権は、北朝鮮の核・ミサイル開発に対する中国の責任や役割を求めていますが、この流れの中で、もしかすると、中国が、金正男を後釜に政権転覆を企て、火種を消そうとするかもしれないと疑った金正恩が、そうは問屋が卸さないとばかりに暗殺を実行したのかもしれません。

また、今回の暗殺事件は、中国と北朝鮮のパイプ役だった金正恩の叔父の張成沢を粛清して、中国は北朝鮮とのパイプを失い、コントロールする術を中国は失ってしまっていることを示しているようにも感じます。

独裁を維持するためには手段を選ばない金正恩の暴走リスクが高まってきていますが、もし、金正男暗殺が北朝鮮工作員の犯行だと明らかになれば、中国も北朝鮮制裁に本気にならざるを得ません。場合によっては中国の北朝鮮侵攻という事態は想像したくないのですが、可能性は排除できないのでしょう。

産経新聞の矢板論説委員は、中国が、暗殺情報を知りながら北朝鮮との関係修復のため金正男を見捨てた可能性も否定できないとされていますがどうでしょうね。近々に金正恩の中国訪問があれば、産経新聞の見方が正しかったということになります。

しかし、韓国紙東亜日報によれば、すでに中国が「マカオにいる長男のキム・ハンソル氏と家族、そして北京にいる最初の夫人の2つの家族が現在中国の保護を受けている」と明らかにしているようです。金正恩に対する中国の外交カードを持っておきたいということでしょうか。金正恩との関係修復を狙うなら、たとえ保護していても公表しないはずです。

いずれにしても、日本は、中国に対して北朝鮮の核とミサイル開発抑止の役割や責任を問い続け、拉致問題解決についても、粘り強く主張し、交渉の手がかりを探っていくしかないのでしょうが、金正恩は、ほんとうに困った存在になってきました。

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