取り引きで勝つことに生きがいを感じているトランプ大統領の危うさが外交にあらわれはじめています。喧嘩のコツは勝てそうな相手を選ぶことだいわれますが、トランプ流の取り引きも同じです。勝つためには、手強い相手を避け、カードが切れる相手に強くでて、一方的に利益を掠め取る。そうしてトランプ帝国も築かれてきたのでしょう。

ビジネスは、互いにWIN-WINの関係を築かなければ長続きしません。トランプ大統領が、互いの利益を生み出そうとするのではなく、取り引きで相手を負かして、一方的に儲かることを追求するセールスマンと評されるのも、そんなトランプ流を見透かしてのことだと思います。
トランプ大統領の危うさは、トランプ独特の取り引き術を、ビジネス以上にWIN-WINの関係づくりが求められる外交にまで持ち込んできていることです。

なにが危ういか。

「敵ではなく、不意打ちで勝てる味方を攻撃する」

それがもっとも手っ取り早く、取り引きの勝利を得られそうだからです。

つまり交渉相手としては、手強い中国やロシアとは距離を置き、無理をふっかければ、折れてくれそうな相手を選んできているように見えます。その相手はこれまで長年の同盟関係、また経済関係の深い国々です。まずは貿易依存の高いメキシコへ、壁をつくれという無理難題、いわば「ミサイル」以上の威力のあるトランプ砲をを打ち込みました。

ひどい話です。

知ってか知らずなのか、いまだに世界の経済関係の主役は貿易だという間違った認識は、相手を面食らわせ、不意打ちとなり、取り引きの好材料になってきます。それがTPP破棄です。

TPPが、中国のパクリから先進技術を守るためにもあるということなどトランプ大統領にとっては関係がありません。TPPよりは、1対1の勝負にもちこんだほうが相手を打ち負かせます。

それを喜んでいるというか高笑いをしているのは習近平でしょう。トランプ大統領が同盟国イジメに奔走している間に、中国やロシアはその間隙を縫って、経済、外交、軍事攻勢をかける機会を虎視眈々とねらっているに違いありません。

今アジアの焦点は、なんといっても朝鮮半島でしょう。中国は韓国に対して、ミサイルを打ち込むよりも威力の高い経済戦争をしかけています。原因は、駐韓米軍のサード配備ですが、そんなさなかに、まだ決まってもいない米国工場建設に、「サムスンありがとう」とツイートするトンチンカンぶりです。

この不確実性の時代には、先のことなどわからない、ケセラセラですが、トランプ流の政策は米国にとっても、同盟国にとっても、リスクが高くなってきます。

支持者からは期待が高いだけに、成果がでず、支持者が失望すればあっというまに失速するでしょうし、共和党が見放します。そうなるとレイムダック状態に陥ります。それに身辺から何が飛び出してくるかもわかりません。いずれにしてもあれだけトンチンカンなことをやっていれば、短期政権で終わる可能性が高いと思います。

オッズの掛け率もそれを見越しているかのようです。週刊新潮の記事で〈トランプ大統領が4年の任期中に弾劾されるか辞任する〉の賭けの配当は「イーブン」で、実際に金メダルに輝いた体操男子団体日本代表の優勝オッズとほとんど同じだそうです。

安倍総理がうまくトランプ流の危ない取り引きを、ひらりひらりとかわせるのかどうかに注目したいと思います。あるいは朝貢外交のふりをして、実を取るぐらいの駆け引き能力が求められているのかもしれません。