石油パイプライン建設推進の大統領令は市場が好感し株価を押し上げましたが、移民や難民の入国禁止令は批判と混乱を招き、米国内での対立をさらに深める結果を招いています。事実など関心がなく、思い込みから膨らんだ妄想による確信で行動し、相手に強い圧力をかけ、有利な取り引きに持ち込もうとするトランプ流が、落し穴にはまったのではないでしょうか。トランプ大統領は、西部劇にでてくる保安官の気分でテロ対策として署名したのでしょうが、事実にもとづかないトンチンカンな規制で、混乱と反発を招いています。ウォール・ストリート・ジャーナルは社説でイラクやアフガンで米軍の生命を守った人びとをも排斥し、生命の危険に晒す結果になっていると批判しています。

移民や難民問題は、さすがにアメリカのアイデンシティに関わる問題でもあり、しかもトランプ大統領に染み付いた強い人種差別と宗教差別に他ならないのでしょう。しかも移民は、アメリカの経済成長を支えているというのが現実で、アップルのティム・クックCEOが従業員に対して、移民がいなければAppleは存在しないというメッセージを発表し、またスターバックス のハワード・シュルツCEOは5年以内に世界各国で難民1万人を雇用する計画に取り組むとし、さらにメキシコとの間に、「壁」ではなく「橋」を架けるとしています。

中間選挙で勝つために、短期で結果をつくろうと、トランプ流をつぎつぎに繰り出すのでしょうが、そもそもが的外れな認識からでたものなので、失敗のリスクも高まります。今回の措置がまさにそうでしょう。

支持者を引き止め、中間選挙を有利にする有効なカードは、株価を引き上げる法人税の引き下げや大型のインフラ投資、また保険料が高騰し、不満の種となったに変わる保健制度の導入の3つだと思いますが、いずれもが議会承認が必要なので、ハードルはかなり高そうです。
 
日本では株主を持つ世帯は全世帯の2割り程度ですが、米国では5割に達しているので、株価は政権の支持率に強く影響してくるはずです。

選挙に勝つために対立を煽り、オバマ時代への不満をもつひとびとをひきつけたトラン大統領ですが、大統領選に勝つことと、大統領として成果をうみだすことは微妙に違います。まだ支持者のトランプ大統領への期待は残っているでしょうが、それも株価の高騰など、実感のあるご利益が得られないと離反が始まりそうです。


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