新しい言葉がでてくると、なにかよくわからないままに一人歩きしはじめ、いつの間にか新しい常識であるかのようになってしまっているということよくあることです。しかも説明を見ても専門用語やさらに慣れない言葉が並んでいたりして、腑に落ちません。その典型のひとつがビッグデータかもしれません。そのビッグデータに関しての目から鱗のような一冊が贈られてきました。献本ありがとうございます。

総務省によるとビッグデータは「事業に役立つ知見を導出するためのデータ」であって、ビッグデータビジネスは「ビッグデータを用いて社会・経済の問題解決や、業務の付加価値向上を行う、あるいは支援する事業」とする定義を紹介していますが、これではますますわかりません。


あまりに抽象的です。その他の書籍でもわかりやすく書こうとする努力はわかるのですが、概念の理解をえることにこだわり過ぎで、退屈してきます。


デジタル技術、また通信の発展は、扱えるデータの種類も、量も広げ、また処理能力も飛躍的に広がってきました。しかも今まさに起こっていることすらデータとして処理できるようになったのです。広がれば広がるほど、使う企業によって、目的も、データ内容もそれぞれ異なってくるので、なかなか説明が難しいのも無理のない話です。


たとえばグーグルはどのような人びとが、どのような言葉で検索し、どのホームページを見たかなどのデータを刻々と蓄積しています。それによって検索をより便利にしているのです。

それは検索窓でのオートコンプリートにも活用されています。例えばグーグルの検索窓に「男性はなぜ」を入力すると、グーグルの冗談かと思うような検索の候補文がでてきます。それはきっとそういう検索をした人が多いからでしょう。


しかしもし自動車のナビの走行データを通信によって蓄積すれば、他の車の走行データもあわせて、目的地まで実際にかかりそうな時間を的確に示せます。いずれもがビッグデータの領域ですが、データの種類も目的もまったく異なります。


さて、どのようなデータを蓄積して、どう活用すれば、どのような結果が得られるかの具体例を知れば、なんとなくビッグデータの世界の特徴もわかってきます。


ビッグデータをより理解するためにオススメしたい一冊がありました。『ハーバード数学科のデータサイエンティストが明かす ビッグデータの残酷な現実―――ネットの密かな行動から、私たちの何がわかってしまったのか?』です。


作者は、出合い系サイト「OKキューピット」の創業メンバーで、データ・サイエンティストです。

出合い系サイトでは、より相性のよさそうな候補の相手を絞り込み、推奨するために、多くの質問を投げかけ、それに答えたデータを活用していますが、データ化しているのはそれだけでなく、候補相手をどう評価したのか、実際にどの人が誰に連絡し、デートまでたどりつけたのか、はたまたうまく行かなかったのかなども追跡し、データ化しています。
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つまり、自己申告した回答だけでなく、実際の反応や行動も重要なデータになってきます。人はなにに惹かれて出会うのか、また何がふたりの出会いの障害になるのかなどの、本人が自覚していない深層心理までもがわかってきます。


出合い系サイト「OKキューピッド」とフェイスブックでは、それぞれのユーザーの範囲の違いで、同じビッグデータといってもなにが違うのかもわかりやすく書かれています。


社会心理学的に見ても、また人が自分で思っていることと実際の行動に違いを生む深層心理についての一冊にもなりますが、おそらくビッグデータの活用を実際の例で見れば、誰から、またどんな方法で、どんなデータを集めるしかけをつくれば、どのような新しい世界が広がってくるのかも想像できるようになってくる「ビッグデータ」のいい入門書と言えそうです。

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