英国のEU離脱は、EUの分解と世界各国のナショナリズムの台頭を加速させ、世界のグローバリゼーションに向かう流れを堰き止めるのでしょうか。その疑問が当然湧いてきます。しかし政治と経済では分けて考えたほうがよさそうです。

政治の世界では、意外と早くその結果が見えてくると思うのが、米国大統領選挙じゃないでしょうか。英国で国民投票を行った結果、「情緒と感情」に支えられたポピュリズムの影響が強く、「離脱」が決定しましたが、その結果が米国の大統領選挙にどう影響するのかです。果たしてトランプ候補にとって追い風なのかはたまた逆風になってくるのでしょうか。


こちらの結果のほうが、そもそもEUのなかでは比較的距離をとっていた英国のEU離脱よりも、世界の経済、また日本の経済への衝撃が大きいのではないでしょうか。


はたして英国の国民投票結果は、米国中心主義の燎原の火を広げるのか、いやポピュリズムの暴走への米国民の警戒心を高めるのかです。


もちろん理性で考えれば、トランプ大統領が誕生すれば、今はグローバル経済で利益を得ている米国の競争優位がゆらぎ、国益を損ねることはほぼ間違いありません。トランプが大統領になれば、米国の凋落の引き金になる可能性が高くなってきます。


しかし、今回の英国の国民投票が示したのは理性ではなく、ポピュリストの単純化された言葉に影響され、情緒や感情で大きな判断をしてしまうものだということで、米国でも同じことが起こらないとは限りません。とくに英国と米国で共通しているのはイスラム系移民に職を奪われることへの反感とテロの恐怖で、それを煽れば人々の心をつかめるのかもしれません。


逆に、しばらくは金融市場が不安定となり、またスコットランドの英国離脱の可能性など、予想される混乱に警戒心が高まれば、トランプ人気の急ブレーキになってきます。日本より株などの金融商品の運用をしている人の比率が高い米国では世界全面株安は日本以上に人々の心理に影響するのではないでしょうか。
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世界各国の個人金融資産の内訳比較 :



米国と英国との違いがあるとすれば、離脱を支えたのは、貧しく移民に職を奪われる恐怖をもった労働者だけではなく、かつて世界を席巻した大英帝国が、EUの官僚主義に支配されていくことに不満や焦りがあったことですが、米国民にはそのような心理はないのではないでしょうか。


しかし、米国国民の心情がいずれに流れるのかはわかりません。


さてEUや米国で、ポピュリズムで人々の不満を煽り、ナショナリズムが台頭してくるとグローバル化の流れがとまるのでしょうか。いやそれはどだい無理な話です。もうそれが世界の経済の基盤となってしまったのですから、グローバル化の潮流とどう距離感を保つのかという選択しかそれぞれの国家はできない時代になってしまっています。


資本関係を見ても、英国は米国抜きには成り立ちません。世界の金融センターのポジションをロンドンが失えば、英国は凋落していきます。だから離脱に酔った英国は、これから国際社会のなかで、どのようなポジションを守れるのか、そのためにはどのように外交交渉を進めたらいいのかといった難しい現実に直面させられ、舵取りに戦略と巧妙さが求められてきます。ポストEUを描き、それを成し遂げるリーダーが登場してこなければ、英国はグローバル化に背いてどうなるのかの手痛い教訓となりかねません。

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