EU離脱と残留かで揺れている英国ですが、いずれにしても、メリットとデメリットがあり、また先のことなど想像もつかないことなので英国内は世論がいずれを支持するのか分かれ拮抗しています。離脱か残留かのいずれを支持するのかの違いを生んでいる背景を端的に示していると思うのが、タイムズ紙は残留を支持しているのに対して、大衆紙サンはEU離脱を支持していることです。

英国経済の先を理性的に考えれば残留だということになるでしょうが、移民の流入によって起こっている、あるいは今後さらに起こってきそうな問題に感情で反応すれば離脱ということでしょうか。離脱が感情問題だから、国家議員の才女ジョー・コックスさんが銃で打たれた事件で世論の流れも変わってきます


さて、英国への移民は1990年後半から増加がはじまり、2004年のEU拡大でさらに急増します。1991年から1995年の間の流入から流出を引いた移民数は年間平均3万7千人程度でしたが、2010年から2014年では年間平均23万4千人となっています。

とくに非ヨーロッパ系の移民が増えてきたのですが、移民の目的は圧倒的に仕事と教育です。失業率は一時の7%とか8%といった水準より低下してきたもののそれでも5%台で、移民への反感が当然起こってきます。また2005年のロンドン地下鉄同時爆破が記憶に残っていますが、テロへの恐怖は高まる一方です。

英国のテロ脅威度の引き上げ(30日午後12時現在)


英国に限らず、EUは移民問題で揺れています。遅ればせながら昨日、『帰ってきたヒットラー』を観たのですが、歴史は必ずしも冷静な状況分析によって動くものではないことを警告しているような作品でした。この世に突然生還したヒットラーが、移民の増加でドイツのアイデンティティが失われていくことへの危機感が蔓延している状態こそ、ナチス復活の最大のチャンスだと語るところは説得力を感じました。


それにしても英国のEU離脱はリーマンショック級の危機をもたらすとか書かれている記事も見かけますが、冷静に考えれば、実際には離脱を決定しても実際に離脱できるのは2年後で、まだまだ調整できる可能性は残されています。


しかし今や世界経済の不安定化を生み出しはじめているマネーは微妙な変化でもリスクを嗅ぎ取れば大きく動きます。その影響をもっとも受けそうなのが、アベノミクスの手詰まりで経済が脆弱な状況に陥ってきている日本ということになってきそうです。


英国のEU離脱リスクを最小化するためには、日本の経済立て直しが迫られているのですが、安倍内閣のブレーン構成から見れば、成長戦略への大胆な発想は期待できそうにありません。さらに野党が経済政策で骨太な論戦を張るのではなく、改憲阻止とかを掲げている限り、議論が深まってこず、とても残念です。

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