三菱自動車の燃費偽装問題で、対象となった車種のユーザーがさっまきに心配したのは中古価格の大幅な下落だったのではないでしょうか。、つまり持っている車の資産価値があっというまに毀損してしまったのです。
さて、燃費がどの程度偽装されたのかですが、報じられているところでは5〜10%だそうです。ところで
5〜10%というと、実際にはユーザーにはどれほどの影響があるのでしょうか。
車を使っている人ならご存知のはずですが、燃費にはカタログ燃費と実燃費があります。カタログには、国交省が定めた方法で測定した燃費(JC08)が記載されます。しかし実際にはカタログで記載された燃費で走る車などありません。
実際に走らせた燃費とはかなり異なり、カタログの数値はあくまで目安にしかすぎず、運転の仕方、あるいはどんな道路を普段通るのかなどの条件で差がでます。その差は5〜10%程度でないのです。
ちなみに不正の対象となったekワゴンのアイドリングストップ機能がついたカタログ燃費が29.2Kmの車種がありますが、ユーザーが投稿した実燃費では、最低が1リットル13.65kmで、最高が21.68kmです。下から2番目と上から2番めを比較しても15.20Kmと20.12Kmで、その差は5〜10%程度どころではないことがお分かりになると思います。
三菱 eKワゴン M / G 2013年登録(660cc B11W CVT FF レギュラー)の燃費 - e燃費 :
こちらがユーザーの投稿による現在の国内車の車種別実燃費ランキングですが、やはりカタログ燃費とはずいぶん違うことが確認できます。
カタログ燃費とは、参考になる程度のバーチャルな数値にしかすぎません。だからつまり三菱自動車が不正をしてカタログ燃費を偽装しても、実際には車の性能としては、おそらく問題になる程度ではないと思います。しかし、それを偽装し、他社と技術力で劣っていないことを示さないと売れないと考えて不正に走ってしまったのでしょう。
「モノとしての価値」、「性能で比較できる価値」では、その不正は大騒ぎするほどの問題ではありません。
しかし実際には、問題の車種は、新車もよほど値引きしないと売れないでしょうし、所有者の方が懸念されているように中古価格も大きく下がるものと思います。
つまり車の価値は、モノとしての測定できる価値だけではなく、メーカーへの「信頼」の上に積み重なっている「モノではない価値」が大きいのです。だから不正は、デザインがいいとか、自分のらライフスタイルにあっているなど、「信頼」の土台の上に成り立っている価値を根底から崩してしまいます。
嘘をつくことは、そんな幾重にも重なり、ユーザーが心のなかで抱いた価値のチャブ台返しをしてしまったことになります。
その代償ははかりしれません。
ワーゲンの排ガス不正問題も同じことです。ブランドも、車の価値も毀損してしまいました。米国政府と車の買取を含めた対応策について暫定合意あったようですが、この合意を順守するには100億ドル超、つまり1兆円を超える経費が必要だそうです。
独VWと米政府、排ガス不正車への対応で暫定合意 | ロイター :
さて今日は情報化社会の時代です。それは、ビジネスの構造を大きく変化させたばかりか、商品やサービスの価値がなにかという尺度も大きく変えました。
それについて、考察した一冊の本があります。タイトルは『複素数思考とは何か。』と難しそうですが、実際に読むと結構わかりやすく、面白い本です。
機能や性能の開発はひとつの手段に過ぎず、それがなにものなのかという意味の開発できるかどうかに鍵が移った今を考えるためのいいヒントになるのではないでしょうか。三菱自動車の不正も、モノづくり時代の尺度、同じ土俵で競い合う発想から抜け出せなかったことで起こしてしまったのだと思えてなりません。
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