鴻海とシャープの合併は双方にメリットがあるとこのブログに書きましたが、日経もそのことに触れています。
転機の鴻海、危機のシャープを救う:日本経済新聞
しかし昨日の「たかじんのそこまで言って委員会」などを見ていると、保守を自認している人たちのなかには、得意気に中国の陰謀説や技術流出の恐れを煽っている人たちがいます。その意図がよくわかりません。
ところで技術流出という話ですが、なにの技術の流出が問題なのかを今回はほとんど話題にされていないところが不思議です。おそらくシャープには液晶で世界に誇る技術があって、外国企業に買収されれば、それが流出してしまい、日本の産業が危ないということなのでしょうか。まさかです。

思い出していただきたいのは、サムスンがシャープを救済しようとしていた時のことです。これに猛反発したのは経産省と、どの業界だったのでしょうか。液晶業界ではありません。

それは複写機業界です。複写機全体での世界のトップシェアを占めているのはHPですが、A3対応機種では日本の独壇場です。つまり販売台数ではHPがトップとしても、高級機になると別です。

A3対応機種では、トップのリコーと二位のキャノンが激しく首位争いをしていて、それにゼロックスが続きます。ゼロックスもどの程度かは知りませんが、富士フイルムが開発・製造しているので日本が独占状態なのでしょう。

複写機のように、デジタルと給紙などのアナログ技術の組み合わせはまさに日本が得意としている分野です。シャープにも複写機事業があり、また技術もあります。サムスンは喉から手が出るほど、その技術が欲しかったのでしょう。

しかし技術の流出ということでは、シャープはHPにもOEM供給しているので、すでに技術は米国には流出していると考えたほうがいいでしょう。最初はOEM供給から始まって、やがて、ごっそり技術を手に入れるというのはサムスンがやってきたことです。
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世界における日本のコピー機のシェア/コピー機Gメンブログ

しかし、液晶はすでに市場では決着がついたも同然です。かつては日本の独壇場でしたが、1990年代後半に参入した韓国・台湾に抜かれ、現在は大きく水を開けられています。かろうじてスマートフォン向けなどの中小型パネルでは、 LGディスプレイが18.1%のシェアでトップとしても、ジャパンディスプレイ(16.0%)、シャープ(15.6%)と健闘していますが、スマートフォンの市場も成熟してきたので、競争環境はさらに厳しくなってきます。

技術開発力で韓国と競り合っている状態、価格では中国に負けているので、たとえばジャパンディスプレイと合併しても事業が大きく伸びる可能性は低いと思います。

技術に限れば、今後焦点になってきそうなのは有機ELパネルの開発競争でしょうが、まだまだ開発競争の段階なので、技術開発投資を必要とし、流出ということにはあたらないように感じます。
「アップル採用」報道で過熱、日韓有機EL戦争 | 週刊東洋経済(ビジネス)

液晶で鴻海が欲しいのは、今のシャープの今ある技術というよりは、今後の市場を拓いていくための開発力やブランドでしょう。

鴻海が液晶で考えていることは、常識的に考えると、日経の時事解説の記事で書かれているとおりだと思います。いえることは、液晶は開発にしても、製造にしても投資力が必要なので鴻海との合併効果がでてくる可能性は高いのです。

太陽電池事業はお荷物でしょうが、問題は鴻海がシャープの複写機事業をどうするのかが見えてこないことです。もしかすると、複写機事業を捨て、あっさりサムスンに売却して利益を得ようとするのか、あくまでシャープ・ブランドで、世界シェア拡大を狙っていこうとするのかです。
ちなみに、HPは昨年、アイデアエコノミー」、つまりITソリューション事業の成長を加速するために、もう将来性が望めないPCと複写機事業の分社化を行っています。やがてPCと複写機事業は売却されると考えるのが自然です。

シャープの事案に関しては、鴻海がどうするのか不透明になってきましたが、もし鴻海が手を引いた場合は、産業革新機構は、どうするのでしょうか。

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