無人自動車といえば、グーグルが浮かびますが、ついこの前、米運輸省道路交通安全局が「人工知能(AI)による自動運転用ソフトウエアを運転者とみなせる可能性がある」と発表したことが話題になっていました。自動運転車の時代が一歩も二歩も近づいたと思われたからです。
しかし、どうも怪しいと思っていたら、誤解というか、拡大解釈して伝えられたと国土交通省の専門家が講演で語っておられたようです。
「AI=運転者は一部誤解がある」、国交省が見解 - クルマ - 日経テクノロジーオンライン

「自動運転技術」はきっとどんどん進化、発展していくと思いますが、「無人で運転してくれる技術」として事業化をはかるのか、「運転者をサポートしてくれる技術」では、よく似ているようでまったく社会の受容度が異なってきます。

自動運転車は交通違反となる走行をプログラムすることはできないはずです。50Kmが制限速度なら50Km以下でしか走行できません。なぜなら、最初から法令違反となるプログラムが国や地方政府が認可するとは到底思えないからです。つまり「無人自動車」デビューの最大の障害は「技術」ではなく「法律」だということです。

もうひとつは、車はアナログ技術の塊です。いくらソフトウェアで制御しても、物理的に車輪で駆動し、またブレーキをかけるとなるとデジタル技術とアナログ技術が融合したものになってきます。たとえば「無人で運転してくれる車」が走行中に、人を道路を渡るのをセンサーがとらえたとしてもなんらかの原因でブレーキの不具合が起こったとしたら、怖いですね。

実際、ネットで話題になっている自動ブレーキシステムの実験を見れば、「自動」がいかに現実には難しいかが分かります。ダミー人形を飛び出させて、実際に車が停まるかを調べてみて、ほんとうに停まったのはスバルのアイサイトだけで、他の車は見事にダミー人形を撥ね飛ばしています。デジタルとアナログ技術の摺り合わせこそが、ほんとうの技術になってきそうです。
最近話題の自動ブレーキシステムいろんなメーカーの車でガチ実験!!ちゃんと止まったのはあのメーカーの車 | FunDO


技術という側面だけを見ると、日本はデジタルとアナログを擦りあわせるのが得意です。世界でシェアが高く、高収益事業の典型はキヤノンやリコーのプリンターや複合機の分野ですが、こちらもデジタル技術だけではなく、給紙などのアナログな技術との組み合わせが味噌です。失敗に終わりましたが、サムスンはその技術を得ようと、シャープ買収を試みたことはご記憶だと思います。
一眼レフカメラも日本がほぼ独占状態ですが、一眼レフカメラのシャッターはアナログな技術でほぼ日本独占、しかもレンズもアナログな世界で、デジタルとアナログの高度な摺り合わせの世界なので参入障壁も高いのです。

高収益事業の創り方(経営戦略の実戦(1))
三品 和広
東洋経済新報社
2015-07-03


日本は「技術大好き」という風潮がマスコミによっても増幅され、自動運転とかいうとすぐにもそんな時代が来ると錯覚している人もいらっしゃるようですが、そうなるとは限らないのも現実です。

「戦略不全の論理」などの著作で人気のある神戸大経営学部の三品先生が3000近くの事業について調査研究されてまとめられていますが、技術を戦略の軸においてしまった企業は、その多くが惨めな結果になっているようです。その典型が自らの技術に溺れたシャープの液晶事業かもしれません。他の事例は、「高収益事業の創り方(経営戦略の実戦(1)」をぜひご覧ください。この本は三部作で、今後「占有率」、さらに「成長戦略」が切り口で、追加発行されてくるそうです。


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