日本酒が苦手だと思い込んでいる人がまだまだ多いのが残念ですが、日本酒は女性を中心に人気が高まりはじめているようです。とはいえ、日本酒を飲む人口が減ったことに加え、量よりは質へと飲み方も変化したこともあって、国内の消費量は減る一方。しかし輸出はこの10年で2.6倍も伸びていて、やがては日本酒ブーム逆流の機が熟すのを待つという感じになってきました。
すこしずつ中味が報道され始めたTPPでは、アメリカのバーボンウイスキーや日本の焼酎、また日本酒を保護する取り決めも個別にされていて、日本酒については、日本で製造していないものは、アメリカで日本酒として販売できないようにする検討を行うといいます。
TPP参加12か国 条文案公表で全容判明(日本テレビ系(NNN)) - Yahoo!ニュース

さて日本酒といえば、つい最近ネット界隈で騒動がありました。『うまい日本酒の選び方』の著者、葉石かおりさんがツイッターで、セブンイレブンから限定発売されたムック『日本酒入門』が『うまい日本酒の選び方』のパクリそのものだ怒りをぶつけ、慌てた出版社が全冊回収するという事態に発展したことが話題になっていました。
『うまい日本酒の選び方』、『日本酒入門』のいずれもが同じエイ出版社から出版されたもので、葉石さんがツイートした同日に、全冊回収することを決定し、回収手配を行ったとのニュース・リリースを発表していました。
10月26日発売の『日本酒入門』に関する件 |エイ出版社ニュースリリース

出版社が流用するぐらいだから、きっと中味も充実しているのだろうと『うまい日本酒の選び方』を発注してようやく届きました。

かつて「沢の鶴」さんのCIプロジェクトのお手伝いしたこともあって、幾度も蔵を見学させていただいたり、日本酒について教えていただく機会があり、ある程度は日本酒のいろはを学んだつもりです。そういうこともあって、日本酒の製造工程などが紹介されていますが、そのあたりはパス。選び方もささっと目を通して、興味の的は、やはり、どんな日本酒が紹介されているのかになります。紹介されている日本酒を見て、あらためて日本酒銘柄の多さを感じました。

100の蔵元、200銘柄が紹介されているのですが、実際に飲んだことのあるのはその三分の一ぐらいでした。それから想像するに、確かにいいお酒が紹介されています。それよりも、えっ、ここも紹介しておいて欲しかったなと感じたのがそれ以上にありました。

つまり、選ぶ人によって、ピックアップされてくる「おいしい日本酒」が変わってくるほど、たくさんの蔵元、また銘柄があるということでしょう。

昭和50年までは、全国に3000以上あった蔵元も現在では1600弱にまで減り、実際に清酒を製造しているのは1260。それでも1260も蔵元が残り、銘柄数となると4〜5万種類になるといわれています。一生かかってもすべてを試飲するのは無理そうな気の遠くなるほどの種類があります。しかも、時代の逆風のなかで淘汰に耐え、生き延びてきた蔵元にはそれだけの価値を持っているということでしょう。

たくさんの蔵元、たくさんの銘柄がある、それは出会いの楽しさがあるということに他なりません。

最近出会ったといえば、ドライブしていて煙突を見つけ、行ってみたのが「岡村酒造場」です。場所は三田市の「木器」というところですが、「木器」を「コウヅキ」と読めというのはかなり無理がありますね。兵庫県はなぜか難読の土地名が多いような気がします。

閑話休題。母屋は茅葺き屋根で、またその前には茅葺屋根の古代室(むろ)があり、時節によってはイベントがあるそうです。
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知らなかった蔵なので、正直なところ、疑心暗鬼のまま、試しにと買ってみたのですが、それが美味しかったのです。また後日近くに行ったときに購入しました。奈良の梅乃宿酒造も、お酒は知っていたのですが、やはりそんな感じで、通りすがりに見つけ、訪れた蔵です。

いや結構道すがら、思いもかけず出会った蔵が多いように感じます。

富山県氷見の高澤酒造場もそうでした。お店の方が、車が「神戸ナンバー」だというのをご覧になって、「わざわざお酒の本場からですか」と喜んでいただき、ねっとりとした柔らかいお味噌のような酒粕をくださいました。教えていただいた通り、チーズやドライフルーツを漬けてみたのですが、ほんとうに美味でした。

杜氏さんのお話を伺うとまたさらにお酒もさらに楽しく味わえます。
我が家から車で小一時間で行ける篠山市は、丹波杜氏の地で、丹波杜氏酒造記念館があります。
丹波杜氏酒造記念館|観光施設|丹波篠山篠山観光協会

篠山観光では、結構オススメのスポットですが、季節によっては、そこで杜氏さんのお話を伺うこともできます。
また酒造りの神様と言われる能登杜氏の農口さんと直接お会いしてお話を伺ったこともあります。
現代のビジネスにも通じる杜氏の心

それぞれの蔵元やお酒には歴史や物語があります。また日本酒は、蔵元や杜氏さんの技術、醸造方法、またどんな種類のお米を使うのかで繊細な味わいも大きく変わります。

地元の兵庫県には酒造米としてもっとも多く使われる山田錦の有名な産地があり、収穫期には、田に契約している銘柄の幟が立ち並び、それも趣のある風景です。

そんな日本酒が持っている奥の深さは、世界のなかでも誇るべきものだと思いますし、これからますます日本の魅力の代表格になってくるに違いありません。

そろそろ鍋をつつきながらぬる燗で美味しいお酒を楽しむ季節になってきました。ちなみに今自宅で燗で楽しんでいるのは、山名酒造の『奥丹波 純米酒』と岡村酒造場の非常に飲みやすい『千鳥正宗 銀冠』です。
奥丹波 純米酒
千鳥正宗



日本酒は知らないという方は、まずは、『うまい日本酒の選び方』に掲載されている銘柄から、試してごらんになれば、きっと日本酒の美味しさに出会うことができると思います。