なにごとも理屈通り、また絵に書いたようにはいかず、そこに落とし穴が待っていることもあるというのが世の習いです。自動車の部品を共有化させることは、合理的なようですが、万が一その部品ひとつに欠陥があれば、全車種にその影響が波及します。欠陥があるだけならリコールの規模が大きくなるだけですみますが、不正ソフトをしくんだ部品となると、ブランドの根幹を揺るがす深刻な影響を引き起こします。排ガス不正問題もワーゲンにとどまらず、アウディへと広がってきました。
アウディ、排ガス不正の対象車は210万台 - WSJ
ワーゲンで問題が発覚した時に、最初にそれならアウディのA3やTTもダメなんじゃないかととっさに思いました。なぜならアウディのA3やTTは、VWのゴルフやパッサートと構造や部品ユニット、モジュールを共有化させたMQB方式の車種だったからです。

しかしロイターの記事によると、不正ソフトが搭載された車種はA3とTTだけでなく、A4、A5、A6、Q3、Q5にも広がっているようです。ということはエンジンの排ガスのクリーンさをコントロールする重要な部品を意図的か、あるいは安易に共通化させていたことになります。

ちなみにこういった自動車の構造やパーツをできるだけ共有化させ、極端に言えば、レゴを組み合わせるようにして開発、生産するVWのMQBは、VWが起こした生産革命ともいわれ、なかには、モジュールの組み合わせ時代に、自前の部品を擦りあわせから抜け出せずに失速してしまった日本のモバイル産業と重ねあわせて、日本の自動車もガラパゴス化してもう終わるとまで言っていた人もいました。
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確かにディーゼル車やプラグインハイブリッド車の迅速な展開はこのMQBの効果だと言われています。
VW、MQB効果でPHEVやディーゼルなど一気に拡充 | nikkei BPnet

しかしワーゲンの誤算は、柔軟な開発を可能にし、また開発期間をスピードアップさせながら、高い品質を実現するためのMQBは、コストダウンをももたらすはずだったのですが、現実はそうはならなかったのです。

むしろ、かえってコストアップし、VWの2013年の利益率でみても2.9%で、 ライバルのトヨタの8.8%に比べてかなり見劣りするもので「コスト削減」の大号令が響いていたのです。それがサービスの低下につながり、中国でのリコール対応への不信感や不満を引き起こし、ワーゲンがもっとも販売を伸ばしていた中国市場での失速につながったのではないでしょうか。

実はMQBで、大衆車VWとプレミアムカーのアウディを同じプラットフォーム、同じモジュールでつくることは、いつかプレミアムカーとしての付加価値の根拠を失い、大きな修正を余儀なくされるだろうと思っていましたが、それより単純なところで問題が波及してしまいました。

大きな落とし穴にはまってしまったVWですが、この部品またソフトを供給したボッシュにも、ソフトはあくまでVWの社内テスト用のもので、2007年には、「VWに対し規制逃れのためにソフトを市販車に搭載するのは違法だと警告する文書を送っていた」(朝日新聞)というのですから、もう絶体絶命です。

影響は、対象となるディーゼル車だけで終わりません。日本市場でも失速するのでしょう。おそらくVWやアウディのブランド価値全体が低下すれば、価格にも影響してきます。それは新車だけでなく、中古にも波及してくるのではないでしょうか。それがやがてオーナーの怒りとなってさらに波紋が広がりそうです。

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