ギリシャへの金融支援が終了期限を迎え失効したと同時に、約15億ユーロ(約2040億円)の債務も返済できないとギブアップしてしまいました。ブルームバーグ紙いわく、「キューバやジンバブエなどと並ぶ延滞国」となりさがってしまったのです。
当面は、ユーロに残り国民にとってはつらい再建政策をとるのか、ユーロを離脱するのかの国民投票の結果待ちとなりますが、果たして結末はどうなるのでしょうか。GIZMODEによると、そこで立ち上がったのが、ギリシャ救済のクラウドファウンディングです。寄付金額に応じて、ギリシャ首相アレクシス・ツィプラス氏のポストカードとか、ギリシャワインなどがもらえる特典があるようですが、確かめてみると、7月1日時点で51万ユーロ(およそ700万円)で、目標の約2兆2千億円にははるかに及んでいません。
Greek Bailout Fund | Indiegogo

ギリシャが増税や福祉削減、公務員の給与カットやリストラなどの厳しい再建の道を選択しなければ、ユーロを離脱して、かつての自国通貨「ドラクマ」を復活させ、紙幣を刷りまくるか、歴史資産をオークションにかけ、売り飛ばして金をつくるしかないのでしょうか。

 ところでこれだけ世界、とくに金融関係者の目が釘付けになっているギリシャはいったいどれくらいの規模の国なのでしょうか。

ギリシャの国土面積は日本のおよそ3分の1強、人口はおよそ10分の1の1,100万人ですが、2014年の名目GDPで見ると、日本が世界3位で4兆6,160億ドル(565.6兆円)で、ギリシャは世界45位で2,138億ドル(およそ26.2兆円)です。ずいぶん経済規模が違います。

総生産額では、日本で言えば都道府県レベルとなり、ギリシャに近い県内総生産額を持っているのは埼玉県20.4兆円か、神奈川県の30.3兆円になります。東京は当然として、大阪府、愛知県、神奈川県のほうがギリシャよりも経済規模が大きいのです。

 長期的な凋落から抜け出せず、住民投票で、急速に地方都市化する道を選択した大阪市ですら、18.7兆円の市内総生産の規模ですが、公務員の数が多く、また生活保護を受ける人が多い特徴もギリシャと大阪市は似ています。というか大阪市は市債残高が5兆円なので、負債額で言えばギリシャよりも大阪市のほうが多いというのは洒落にもなりません。

いずれにしてもギリシャの経済規模は小さく、なにか思わぬところに着火して広がるということでなければ、ギリシャ発の金融危機もその程度で収まるのでしょう。
ギリシャ発の深刻な金融危機は起きない | オリジナル | 東洋経済オンライン
 
それよりも大きいのは、ギリシャの経済破綻はEUの失敗であり、ヨーロッパの理想、理念、夢が揺らぎはじめたことです。そのことを英ファイナンシャルタイムズの記事が指摘しています。
今回の危機は、民主主義にとっても重大な意味を持つ。民主主義は、30年以上前にギリシャをEUに引き込んだ元来の象徴的意義だが、アレクシス・チプラス 首相は今、EUはギリシャの民主主義を担保するどころか、ギリシャの敵となり、国民の意思を踏みにじっていると主張している。

実際には、もちろん、これは民主的な負託の衝突だ。つまり、緊縮から逃れたいと願うギリシャ有権者と、自分たちの融資が返済されることを望み、改革されな いギリシャがEUのおカネから恩恵を受け続けるのを認めたくないほかのEU諸国の有権者(および納税者)が対立しているのだ
[FT]ギリシャで死んでいく欧州の夢  :日本経済新聞

政治が課題に向き合わずに、自らの生き残りのために「国民投票」で責任回避する道に走ってしまう というのは、民主主義の困った欠陥かもしれません。

しかしまあ、機を見て敏だと感じさせるのが中国です。李克強首相がギリシャの借金のめんどうを見ても良いという趣旨を表明しています。EUに恩を売り、ギリシャをヨーロッパ進出の足がかりにしようということでしょうか。

ギリシャ危機に救世主? 「借金、工面してもよい」と示唆=中国首相: サーチナ
【ギリシャ危機】中国がギリシャに急接近、狙いは欧州進出の足掛かりか 国債購入約束の情報も…(1/3ページ) - 産経ニュース