ロシアの下院ですでに可決されていたサケ・マスの流し網漁を禁止する漁業・水産資源保全法改正案が上院でも可決され、2週間以内にプーチン大統領の署名を経て施行されます。来年からはロシアの経済排他水域(EEZ)では漁ができなくなります。日本は「科学的根拠がなく、長年の日露の協力関係を損なう」とロシア側に訴えていたのですが、国際環境保護団体・世界自然保護基金(WWF)のロシア支部が働きかけ可決にいたったようです。
ロシア:上院、流し網禁止法案可決 日本のサケ漁不可能に - 毎日新聞

スターリンが北方4島を強奪するまでは日本の領海だったのでロシアが勝手に決めることは釈然としないものを感じますが、海の資源を守るという点では、サケ・マスの消費大国である日本の農水省や漁業関係者がどう動いてきたのか、WWFとのやりとりがどうであったのかも気になるところです。
サケの持続可能な利用をめざして|持続可能な漁業の推進|WWFジャパン
日々の食卓、また回転寿司のメニュー、おにぎりや弁当で人気の高い素材だけに、私たちの暮らしにどんな影響があるのかが気になるところですが、まずはサケ・マスの漁獲に関しての基礎的なデータを集めてみました。

消費量は増えてきているのか
独立行政法人水産総合研究センター北海道区水産研究所にデータがまとまっていました。
さけます需給の推移(原魚換算なし)|水産総合研究センター「北海道区水産研究所」

国内の消費向けに出荷された量の推移を見ると、1990年代半ばまでは消費が伸びています。しかし1996年の55.2万トンのピークを境に消費量が停滞しはじめ、また2002年に2度目のピークを迎えた後は消費量は減少してきています。国内消費png


日本はサケ・マスをどこから調達しているのか
かつては、ほとんどが国内生産(日本での漁獲量)でしたが、現在は輸入が増え、最近では国内生産を上回るようになってきています。

輸入

輸入が増えてきていますが、どの国からでしょうか。国際環境保護団体・世界自然保護基金(WWF)のロシアへの働きかけやロシア議会の決定から想像すると、ロシアからが多いのだろうと錯覚してしまいそうですが、実際は圧倒的にチリからです。ロシア海域での流し網漁ができなくなっても、チリなどからの輸入量が増えるなど市場が調整するだけではないかと感じます。国際環境保護団体・世界自然保護基金(WWF)のホームページを見ると、日本がサケ・マスの大量消費地だから責任を持てという主張ですが、もともとこの海域での漁獲は日露政府間協議で調整しているので意図がよくわかりません。マルハニチロのホームページにグラフがありましたので掲載しておきます 。

■日本の相手国別輸入量の推移
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サーモンミュージアム(鮭のバーチャル博物館)|マルハニチロ株式会社

ロシア海域での、サケ・マスの流し網漁の禁止は、日本の北海道や青森などの漁業やロシアの漁業にとっては打撃になってきます。ちなみに北海道新聞の記事によると、「根室市の試算では、流し網漁が禁止された場合の道東地域の損失額は、加工・流通など含めて250億円に達する」とか。
ただ上記の毎日新聞記事によると、今年の漁業協定では日本への割り当てはおよそ2,000トン、前年が3,000トン弱だったようで、国内生産量全体からしてもさほど多くはありません。地域経済にとっては深刻な事態ですが、日本の消費全体に及ぼす影響は限定的だと思われます。

ほんとうに乱獲されているのか
もうひとつ、国際環境保護団体・世界自然保護基金(WWF)の主張だけを見ていると、サケ・マスは資源量に限界があり、日本が爆食するので資源がなくなってしまうという錯覚に陥りそうになります。確かにマグロは、海外での需要が急増してきており、その危機がありますがサケ・マスも同様でしょうか。
そこで、 世界のサケ・マス生産量の推移を見ると、生産量はどんどん増えてきてるとはいえ、生産量が伸びてきたのは養殖によるものです。天然漁獲量はほぼ横ばいでした。 こちらもマルハニチロのホームページのグラフを参照しました。

■世界のサケ・マス生産量の推移
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サーモンミュージアム(鮭のバーチャル博物館)|マルハニチロ株式会社

ざっと見ると、サケ・マスに関しては国際環境保護団体・世界自然保護基金(WWF)の主張はなにかピントがズレているという印象を受けます。どうなんでしょうか。北海道新聞によると、「過去3年間に上下両院を通過した法案約1500件のうち、プーチン氏が署名を拒否したケースは1件しかない」そうなので、施行される可能性が高いのですが、日本訪問の土産話として、法案拒否ということもあるのかも気になるところです。

また国際環境保護団体・世界自然保護基金(WWF)の活動ですが、いきなりあまり実態にそっていないロシア海域での流し網量禁止を働きかけるよりも、この団体も触れているトレーサビリティの強化とか、漁業者の資格制度などを各国に提案するのが筋ではないでしょうか そうでなければ環境カルトだと批判されてもしかたないように感じます。


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