マクドナルドは3月の売上も前年同月比で29.5%減となり、14ヶ月連続の前年割れでした。決算ももう説明しようもない減収と赤字でした。マクドナルドの不振はすっかり定着し、もはや話題にもならなくなってきているだけでなく、お店によって、また時間によっては、売上不振のせいでスタッフが減り、注文してからメニューがでるまでの時間もたっぷりかかり、もはや「ファーストフード」ですらなくなってしまったところが痛々しいところです。そこまで待たせられるのならモスバーガーのほうがいいですね。
ところで、マクドナルド不振の原因ははっきりしています。しかも原因は3つしかありません。

ひとつは、食の安全・安心への取り組みに大きく遅れてしまったことです。しかも鶏肉偽装問題への対応が中途半端だったところに、相次ぐ異物混入の発覚まで起こって食の安全・安心どころか不信感を深めてしまいました。

ふたつ目は、ライバル、とくにコンビニと差別化できる魅力あるメニューの開発ができなかったことです。

そのために、従来からあったメニューの陳腐化に歯止めがかからず、クーポンで値引きでもしなければ売れない状態が続きました。コンビニに客を奪われるのも魅力あるメニューがないからです。カサノバCEOになって、積極的にメニュー開発に取り込んできたのですが、思い切りとセンスが悪く、どれもヒットしません。調理の仕組みや、材料調達のルートを大きく変えるといった思い切った仕組みの変革を実行できるスタッフがいないから中途半端になってしまっているのかもしれません。

今は「チキンてりたま 瀬戸内レモンソース」というのをやっていますが、その切り口では、レモンは100%瀬戸内海で収穫されたストレート果汁としても、肝心の鶏肉の産地はいったいどこなのだとうかと想像せざるをえなくなってしまうのです。鳥はタイ産だとしっかり書いておけよと言いたくもなりますし、国内産鶏肉を使っている「ケンタッキー」とか「鳥貴族」を見習えばとも思ってしまいます。

ダイヤモンド・オンラインに、発売後2週間で年間売上目標の8割を売ったキリンビバレッジの「別格」についての記事があり、今日の商品開発は、『ある程度売れる常識的な商品』でなく『ホームランか三振』でなければいけないという佐藤章社長の言葉がありましたが、それほど消費者が新しいと感じ、関心を持ってもらうためのハードルが高くなっているということだと思います。そんなハードルを超えるためには、大きく発想を変えて、メニューを開発する創造力や、それを打ち出すリスクをとるパワーが求められるということでしょうが、優等生のカサノバ社長にはそんなところが感じられません。
「ホームランか三振か」大振りが当たったキリン「別格」開発秘話|ヒット商品開発の舞台裏|ダイヤモンド・オンライン

3つ目は、組織の能力の低下だと思います。原田CEO時代の人事で、創業者の藤田時代の幹部がほとんどすべて追放され、経営陣が、現場を知らない「プロ経営者」ばかりになってしまったことが原因だという指摘が増えてきているように感じます。原田CEO時代に、カウンターからメニューを撤去したり、その翌年に60秒以内に商品が提供できなければ無料券を渡すというキャンペーンがありましたが、もうそれは現場を知らずに机上で思いついただけの効率化策だったのでしょう。どこが「プロ経営者」なのかと十分に疑わせる出来事でした。
また鶏肉偽装問題で、トップを出さなかったのか、出なかったのか、まるで他人ごとのような謝罪会見を行ってしまったことも、現場や消費者を心を知らない「プロ経営者だけの経営」の限界を象徴しているようでした。「プロ経営者」が何なのかを十分に疑わせる出来事でした。
マクドナルドの「謝罪」は、何を間違えたのか |東洋経済オンライン

外食ジャーナリストの中村芳平氏が、ビジネス・ジャーナルの記事で、相次いだ異物混入問題は、原田CEO時代に「品質管理システム」をコスト削減の名目で外部に委託してしまい、現場での対応力を失ってしまった結果起こったと指摘されていますが、なるほどと感じます。目先の小さな利益のために企業の本質にかかわる能力を犠牲にする愚かな経営をしてしまったことになります。
マック崩壊を招いた、組織破壊と優秀な人材の放逐 FCから反発噴出で集団離反の恐れも | ビジネスジャーナル

マクドナルドも痛い目にあったからでしょうか、以前にマクドナルド社長からFC店を展開する会社にいわば「島流し」されていた下平氏を、原田会長の引退後に日本マクドナルドホールディングの代表取締役副社長兼最高執行責任者、また日本マクドナルドのナンバーツーとして代表取締役副社長兼最高執行責任者に復活させる人事を行っています。

原因ははっきりしているのです。しかし、問題は、原因がわかっているというのと、それに向き合い、問題の創造的な解決を行う能力があるということは別です。問題の創造的な解決のためには、アイデアを構想し、組織を動かして実行を促していくリーダーが必要になってきます。

経営には科学的な側面もありますが、それだけで経営ができるというものではありません。感性やセンス、また信念やリスクを取る器量などがとくに変革のリーダーシップをとるためには必要になってきます。

そんなリーダーシップをもった逸材がマクドナルドの内部にいるのかが問題になってきますが、いなければ外部から来てもらうか、あるいは、それができそうなリーダーがいる企業に日本マクドナルドを売却するかです。今のままでは日本マクドナルドもFC加盟店も赤字が累積し成り立たないのでその決断が迫られているはずです。

そんなさなかだからでしょうか、カサノバ社長の後任は、原田CEO時代にマクドナルドを去りバーガーキング社長として実績をあげている村尾泰幸氏が適役だろうとか、FCが逆に日本マクドナルドを買収してみてはどうかといった記事がライブドア・ニュースを賑わせていますが、記事内容そのものは勇み足だとしても、それぐらい思い切ったことをやらないと復活劇もなさそうだということでしょう。
マクドナルド経営危機 カサノバ社長の後任はバーガーキング社長? - ライブドアニュース
マクドナルドがとるべき打開策 大手フランチャイズが米本社を買収? - ライブドアニュース

しかし、マクドナルドにも一抹の希望が生まれてきています。米国本社のCEOが変わりました。米国でも不調が続くマクドナルドでしたが、英国のマクドナルドを立て直した実績のあるスティーブ・イースターブルック氏がこの3月初めに本社のCEOに就いています。詳しくはこちらの記事をどうぞ。
【ルポ 世界のマック】安心・健康で英国は復活していた〜米本社の新CEOは英マックを再生した立役者
マクドナルド新CEOの前に立ちはだかる難題 | JBpress(日本ビジネスプレス)

それでさっそくの新CEOの仕事ということでしょうか。米国で、ベーコン、マッシュルーム、レタス&トマトの3種類からトッピングを選べ、3分の1ポンド(約150グラム)のサーロイン肉を挟んだバーガーが発売されるとか。アクションが、早いですね。日本でも必要なのは、そんな機敏さと思い切りの良さでしょう。
米マック、今度の高級メニューはサーロインバーガー - WSJ

日本は米国についでマクドナルドの店舗数が多いので、おそらく早い機会になんらかの経営テコ入れを行ってくると思いますが、スティーブ・イースターブルック新CEOが米国と日本の両市場の立て直しで二兎を追うのか、日本市場は誰かに任せるのか、はたまた日本マクドナルドは売却してしまうのか、きっともうすぐ結論が下されるのではないでしょうか。

モスバーガーに買収資金が捻出できるかと考えれば悲観的にはなりますが、できればモスバーガーに身売りしてもらえれば、近くでモスバーガーが利用できるようになり、嬉しい限りですが、皆さまはいかがですか。もしマクドナルドがモスバーガーに変われば喜んでお店にいくとお感じなら、マクドナルド再建はそう難しい話ではなさそうです。

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