2014年はiPhone6とiPhone6Plusの大ヒットがあり、その一方でサムスンはシェアダウンに歯止めがかからなかったために、ついに10〜12月期には出荷シェアでサムスンとアップルが互角で並ぶ結果となりました。それが業績にも色濃く反映されています。

サムスンとアップル
(IDCデータ参照)
サムスンの2014年10〜12月期は売上高が前年同期比11.04%減の52兆7301億ウォン(約5兆6690億円)、営業利益が36.37%減の5兆2884億ウォン(約5690億円)というものでした。スマートフォンを主力とするIT・移動通信部門が、営業利益を約6割も減らし、好調な半導体でなんとか持ちこたえたというかたちです。このままでいけば、おそらくサムスンはスマートフォンでの利益をさらに落し、半導体でしか利益がでない企業になって行く可能性すら感じさせます。
サムスン第4四半期営業益は‐36%、スマホ低迷 通年で3年ぶり減益 ||Reuters

一方のアップルは、売上高750億ドル、純利益180億ドルを計上する空前の好決算でした。しかもしばらくはアップル好調の勢いが止まりそうにありません。
[FT]米アップル、空前の好決算 さらなる期待に直面:日本経済新聞

なにがこの明暗を分けたのでしょうか。もちろん、アップルはiPhone6とiPhone6Plusが大ヒットした、一方のサムスンは4月に投入したGALAXY S5が、今ひとつだったことが響いた結果と見ることはできます。

しかし、サムスンはGalaxy Note 4、Galaxy Note Edgeなどをつぎつぎに投入し、広告展開も積極的でした。これまでのサムスンの勝利の方程式をすべて投入したのです。しかしそれでも退潮に歯止めをかけることができなかったことになります。

業界でトップのポジションを得ている企業が、わずか1年ほどの期間に、大きくシェアを落としまうのにはそれなりの理由があるはずです。

それはスマートフォン市場のふたつの構造変化が起こってきたからだと思えます。

第一はスマートフォン市場の主戦場が移ったことです。先進国市場ではもはや普及率の伸びが市場成長を伸びる時代が終わりました。先進国市場が2014年には成長率がもはや4.9%でしかなくなりました。普及の伸びしろが残っているのは途上国市場だけとなり、実際、途上国がスマートフォン市場の成長も規模をも支えるようになってきました。今では途上国市場がスマートフォン市場の7割を占めるまでにいたっています。

第二は製品ライフライクルが成熟期のステージにさしかかってきたことです。スマートフォンが、生活者の期待や使いこなせるレベルを、技術の進歩が超えてしまい、製品のイノベーションを追求すれするほど過剰品質となってしまうようになりました。当然、技術イノベーションによる効果が著しく低下し、機能や性能での差別化も効きづらくなり、価格競争も始まってきます。

そんな2つの流れのなかで、レノボ、華為(ファーウェイ)、小米(シャオミ)などの中国メーカーが台頭し、インド市場ではマイクロマックス・インフォマティクスといったベンチャーが台頭してきたのは必然だったといえます。
インド発スマホベンチャーが爆発的な成長 | モディ政権で始まるインドの夜明け | 東洋経済オンライン

そのことは、モノづくりと古典的マーケティングで成功してきたサムスンにとっては大きな脅威となります。差別化の手段が手詰まりになり、しかも新興勢力が価格で差別化する標的になってしまったのです。
大西 宏のマーケティング・エッセンス : 「モノ」の価値しか生み出せないサムスンに立ちはだかった壁

ではなぜアップルは、サイズを大きくしただけのiPhone6、iPhone6plusがヒットし、しかも台頭してきた新興勢力の台頭の影響を受けていないのでしょうか。

それはPC時代に辛酸を舐め、教訓を得たジョブズによる「戦略のイノベーション」の結果ではないでしょうか。シェアではなく、ファンを広げることに戦略のコアを置いてきた結果のように見えてきます。
ジョブズはハードが成熟し、コモディティ化に向かい、新興勢力が台頭してくる時代を見据え、そんな状況変化が来ても、なおかつ強いアップルをつくってきたかのように感じさせていましたが、ついにそんな時代の流れになってきたのです。

それが両社の明暗を分けた最大の要因だったのではないでしょうか。より詳細はメルマガにまとめてきましたので、ご興味のある方はそちらでお読みいただければと存じます。

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