最近、ようやくガソリンの店頭価格が目に見えて安くなってきました。全国平均で、夏には1リットル170円に迫っていたレギュラーガソリンが152円程度にまで下落してきました。安いガソリンスタンドではすでに140円を切り始めています。物価も上昇しなくなり、景気が減速しはじめ、国内の不満が高まり始めたアベノミクスには、突如、救いの風が吹いてきたことになります。しかし日銀のインフレ目標達成にはマイナスとなり、いよいよアベノミスクも、アベノジレンマの様相となってきたようです。さてそんななかで黒田日銀総裁はどんな手を打ってくるのでしょうか。
そもそも、お金を刷れば景気がよくなるという宗教はもともと理にかなっていなかったのですが、マスコミ、学者、エコノミストを総動員し、アベノミクスへの期待感を醸成したことは見事でした。まともな経済学者でインフレ政策に異を唱えている人はいないといったまことしやかな嘘もよく聞かれたものです。実際はそうではく疑問を投げかけていた経済学者も決して少なくありませんでした。まあ、それだけマスコミジャックされていたということです。

しかし、消費税増税後の経済減速があきらかになり、ようやく日銀の金融緩和政策に疑問を投げかけても、犯罪人扱いされることもない雰囲気になってきたことは喜ばしい限りです。

安倍総理が、「日本は長いデフレに苦しめられてきた」と繰り返しおっしゃっておられますが、日本が苦しんできたのは、国際競争力の低下や、経済の停滞です。デフレはその結果に過ぎません。原因と結果を取り違えているのです。

たとえれば、なんらかの慢性の病気が原因で低血圧になってしまった患者に、血圧を上げる薬をだしたとしても、一時的にはめまいなどの症状を抑え、快方に向かっている気分にさせてくれますが、慢性病そのものは治りません。むしろ時間はかかっても慢性病そのものの根本的な治癒に取り組むべきでした。

さて、原因と結果を取り違えた異次元の金融緩和政策で、円安が進行し、輸入価格、つまり企業にとっては調達コストは上昇したものの、それを販売価格に転嫁できない状態が続いています。

また実質所得が伸びないために、消費が冷え込んでしまい、また物価が上昇しない状態にアベノミクスは陥ってきました。総務省のコアはじめ、さらに低下していきそうな勢いです。東大日次物価指数では、7月以降はマイナスとなり、いまではマイナス0.5%あたりで膠着状態となっています。そちらのデータからみれば、すでにデフレに逆戻りしてしまったのです。
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しかし、景気が減速しはじめ、物価も上昇しなくなり、行き詰まり始めたアベノミクスに、突如、救いの風が吹いてきました。

原油価格の急落です。円安は、調達費、物流費、光熱費などの高騰となり、国内産業や家計を襲い、圧迫してきたのですが、まさに神の救いの手がさしのべられたかのように原油価格が低下し、また店頭でのガソリン価格も目に見えて低下しはじめました。

■レギュラーガソリン店頭価格推移
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原油価格の低下は、世界の先進国経済にとってはコストを抑えることになり、プラスに働いてきます。海外からの輸入にすべて頼っている日本にとってはましてやです。原油価格が下がって不利益なのは石油会社とか、一部の金融でしょうが、実体経済にはプラス材料であることは言うまでもないことです。

黒田日銀総裁も原油価格の大幅な下落について、短期的に物価を下押しするものの、今後、景気や物価を押し上げるとして、原油安が日本経済に与える効果を強調するコメントを出しておられますが、原油安の効果が日本の景気を押し上げ、物価面でもプラスに働くという認識で、それはこれまでの主張とは矛盾していないかと
思わず突っ込みたくなります。
日銀総裁「原油安は景気や物価押し上げる」 NHKニュース :

しかし原油安は、企業や家計のコスト負担を緩和し、アベノミクスに生じ始めた懐疑心、また景気悪化の不満を緩和することにもなってきます。

ただ、黒田日銀のインフレ政策にとっては大変なことです。石油やガソリンの価格の低下は、物価を押し下げる方向に働きます。まさか原油相場に手をつっこみ、原油価格をあげることなどできません。

まさに、アベノミクスが抱えたジレンマです。行き過ぎた円安政策で痛み始めた国内経済にとっては歓迎すべきことですが、黒田日銀のインフレ目標達成にとってはまさに逆風です。また追加の異次元の金融緩和を行なって、インフレ目標の達成を狙うのでしょうか。それでは日本の経済にとって、リスクが高すぎます。

もうそろそろ、対処療法のカンフル剤をどう打つのかではなく、実体経済をどうすれば、活性化させることができるのか、どうすれば潜在成長力を取り戻せるのかに、政策の焦点が移ってくれば日本も健全です。野党はその一点で、与党との論戦に望むべきだと思います。

昔、竹村健一さんが「日本の常識は世界の非常識」とよくおっしゃっていましたが、世界の非常識でも、それが競争優位、日本の強さにつながるのならいいのですが、非常識が障害になり、経済活力を削いでいるものであれば、それを変えていくというのがどう考えれも筋であり、日本の経済成長への近道です。

韓国では、一人あたりのGDPが2019年には日本を追い抜くという予測がでているようですが、そんなシナリオを吹き飛ばす政策に期待したいものです。
韓国の1人当たりGDP、2019年には日本超える  中央日報


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