オバマ大統領は、米国も人種差別社会から大きく変化し、ひとつのアメリカが誕生すること、またブッシュ政権が進めた富裕層への税制優遇による格差拡大の是正への期待から誕生し、また世界にアメリカが大きく変わることを印象づけ誕生しました。しかし、就任から6年経った今では、「CHANGE」「YES、WE CAN」も、「NO  CHALLENGE」「NO, I  CAN 'T」に変わってしまったようです。
ファーガソンで起こった警察官による黒人少年射殺事件から広がった抗、またかという印象を受けたのですが、ミズーリ州の大陪審が警官の起訴を見送ったことで全米に広がる抗議デモとなり、暴動も起こりました。
オバマ大統領は、裁判の見送りが決定されたあとに、「 アメリカは法治国家だ。大陪審の決定を尊重し、抗議活動は平和的に行うことを望む 」と冷静な対応を呼び掛けるにとどまり、事態を収拾するメッセージを発することもできないままです。現場を訪問することもなく、「なにもできないオバマ」を強く印象づけてしまいました。

警察官が無抵抗の黒人を射殺する事件は繰り返し起こっています。2009年の元旦に、カリフォルニア州オークランドを走る地下鉄の駅で、プラットホームにうつ伏せに寝かされ、両手首に手錠が掛けられた黒人青年オスカー・グラントさんが、警察官に射殺される事件は衝撃的でした。その後「フルートベール駅で」のタイトルで映画化されています。この事件でも警察官は、過失致死の軽微な罪を問われただけだったようです。
無抵抗の黒人青年を、警官は地下鉄ホームで射殺した:日経ビジネスオンライン






警官が黒人を射殺しても無罪になったといえば、米フロリダ州中部サンフォードの路上で2013年に発生した元自警団団員による黒人の少年の射殺事件もそうでした。判決は、正当防衛だったとし無罪でした。
CNN.co.jp : 黒人少年射殺の被告に無罪評決 人種問題絡め米注目の裁判


ファーガソンで起こった事件については、ニューズウィークのコラムで、原因は人種差別問題だけでなく、あまりに警察組織が地域別に細分化され、維持コストが上昇してしまったために、交通違反などの違反金を追求せざるをえなくなってしまった状況もあると指摘されています。
黒人射殺事件を引き起こした「利益追求型」警察 |  ニューズウィーク

もう一方の格差問題ですが、オバマ大統領が格差の是正に手をつけようとしてきたにもかかわらず、「繁栄の分け前が1%の最上層によって独占されるという構図」は解消されそうにありません。

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米世帯の年収推移をグラフ化してみる - ガベージニュース

格差が広がると、貧困層が固定化され、ますます格差が広がっていくことになります。金融経済のメカニズムが、さらに格差を広げていきます。ファーガソンの事件から広がってきた抗議の怒りの声のなかには、そんな不満も交じり合っているのだと思います。

国民を所得順に並べて、真ん中の順位(中位数)の人の半分以下しか所得がない人の比率を相対的貧困率といいますが、アメリカが先進国のなかでは極めて高く、しかも日本も、社会保障などによる所得再配分前では、増加傾向にあるので要注意ですが、今は、格差の大きいアメリカや英国の経済のほうが順調だというのも皮肉な話です。
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第5章 国際比較からみた日本社会の特徴 - 厚生労働省

先進国では唯一、経済が好調なアメリカですが、差別と貧困の歪という罠から抜け出せるのでしょうか。暴動が多発する中国を笑えない状態になってしまいました。これからオバマ政権はいよいよレイムダック状態になるのでしょうが、政治空白の状況のなかでも、世界経済への影響力が大きいアメリカの経済は順調であってほしいものです。

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