筋萎縮性側索硬化症(ALS)の認知を高め、寄付を募るための募金活動としてのアイスバケツチャレンジですが、最初はそれなりの著名な人たちが氷水をかぶる意外性で関心を集めました。しかし、それもピークを過ぎると驚きや話題性は消え、まるで「不幸の手紙」や「幸福の手紙」などのチェーンメールみたいになってきていることを感じます。
アイスバケツチャレンジの「終わりの始まり」 - NAVER まとめ
そんなタイミングで、サムスンがGalaxy S5でアイスバケツチャレンジを行うCMをつくり、そのなかで、挑発するように、iPhone5s、HTCのOne M8、ノキアのLumia 930の3機種を次のチャレンジャーとして指名しています。Galaxy S5だけが防水だとアピールしたかったのでしょう。
しかしCMのなかでは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)についても、募金活動にも触れられていません。YoutubeにアップロードされたこのCM動画に対してもから辛口の批判的なコメントがずらりと並んでいます。



病気を患う人たちの苦悩、また募金活動の善意を、ビジネスに利用し、しかもライバル製品を中傷することで優位を誇示しようというのでは、競争に勝つためには手段を選ばないというサムスンの体質が見事にでてしまったように感じます。

サムスンが、プレステージでは上からアップル、価格競争では下から中国勢の攻勢で、サンドイッチ状態に陥り、しかもスマートフォンやタブレット、またウェアラブル端末と「もの」はつくれても、アップルやGoogleのようにさまざまなソフトやコンテンツが集まってくるプラットフォームを生み出せておらず、ユーザーを引き止めておくことも困難です。サムスンは、日本のエレクトロニクス産業や家電がいつか来た道をたどっているように見えます。「ものづくり特攻隊」が背負う宿命です。

サムスンの企業力からすれば、一挙に帝国崩壊とまではいかないにしても、この分野の栄枯盛衰は激しく、厳しいサイクルに入ってきていることは間違いありません。2014年第2四半期決算で、減収減益となり、すくなからず韓国にショックが広がっているようですが、不調の原因は、サムスンの売上高の3分の2を占め、稼ぎ頭であったモバイル事業の失速です。そのモバイル事業が売上高が20%減、また営業利益が30%減という結果でした。

しかもサムスンは、時価総額の30%に相当する600億ドルの現金を保有していますが、韓国政府が現金保有高が大きい企業を対象とする新税を導入したこと、また李健熙(イ・ゴンヒ)会長が発作を起こし、昏睡(こんすい)状態ですが、相続問題も負担になってきます。
転換期迎えたサムスン電子―1年半前とは様変わり - WSJ


さらにウォン高も重くのしかかり、ものづくりの「最後の帝国」ともいえるサムスンの前に聳える茨の道をサムスンはどう乗り切るのでしょうか。さらにサムスンが凋落すれば、韓国経済をも揺るがします。こちらもかつて日本が低成長とデフレに苦しんできた失われた20年の始まりなのかもしれません。
韓国が「日本化」懸念、中央銀行は否定も随所に赤信号点滅―韓国メディア|―XINHUA.JP -

やはり模倣による成長は限界があります。「追い抜け追い越せ」に成功しても、やがては、同じ方法で新興勢力のチャレンジを受けます。模倣ではなく、今日の成長戦略は、価値創造と参入障壁となる独自の「しくみ」の創造を追求する以外にないという教訓をサムスンはあらためて見せてくれているように感じます。