朝日新聞が、慰安婦問題を取り上げ、今日の慰安婦問題をつくるきっかけになった吉田証言が嘘であり、また慰安婦と軍事工場などに徴用した「女子挺身隊」の混同があったことを認める特集を掲載しています。
慰安婦問題どう伝えたか 読者の疑問に答えます
過去の否を認めたことは評価しますが、問題は、第一面に掲げられた編集担当の杉浦信行氏の「慰安婦問題の本質 直視を」のタイトル記事です。本質を直視すべきは慰安婦問題ではなく、朝日新聞の体質そのもののはずです。
慰安婦問題の本質 直視を
杉浦氏の記事は朝日新聞の無責任さを際立たせています。慰安婦問題に関する間違った記事が、反日キャンペーンの道具として慰安婦問題が利用されるようになったり、ナショナリズムを煽る事態を招いていることはまるで無関係のような論調です。
 慰安婦問題に光が当たり始めた90年代初め、研究は進んでいませんでした。私たちは元慰安婦の証言や少ない資料をもとに記事を書き続けました。そ うして報じた記事の一部に、事実関係の誤りがあったことがわかりました。問題の全体像がわからない段階で起きた誤りですが、裏付け取材が不十分だった点は 反省します。似たような誤りは当時、国内の他のメディアや韓国メディアの記事にもありました。
 こうした一部の不正確な報道が、慰安婦問題の理解を混乱させている、との指摘もあります。しかし、そのことを理由とした「慰安婦問題は捏造」という主張や「元慰安婦に謝る理由はない」といった議論には決して同意できません。
よくも抜け抜けと書くと恐れいります。すくなくとも慰安婦問題に火をつけるきっかけになったのは、吉田証言の特集記事だったはずです。

戦時下での慰安婦問題を取り上げ、戦争の非人道性を訴えるというのなら、日本だけでなく、韓国で訴訟が起こっている朝鮮戦争当時の韓国の従軍慰安婦問題、またベトナム戦争当時の韓国軍による慰安婦問題も取り上げるべきだし、韓国軍がベトナム人女性を強姦し生まれた「ライダイハン」の問題も取り上げるべきでしょう。しかも、軍を相手とした慰安婦の問題は、日本や韓国だけではなく、世界中で起こっていた問題です。

それを指摘した橋下市長に対して、朝日新聞は先頭を切って叩き、またニューヨーク・タイムズ経由で違った記事を世界に広げたこと、その結果橋下市長が、四面楚歌になってしまったことは記憶に新しいと思います。

朝日新聞の反橋下キャンペーンを展開し、意図的に世界に問題を広げてしまった過程を、木走正水さんがブログで詳しくまとめられています。
検証!朝日新聞(NYT)マッチポンプ「従軍慰安婦」報道 (1/2)

では朝日新聞の杉浦信行氏のいう慰安婦問題の本質とはなになのでしょうか。

人道的な視点での慰安婦問題の本質となると、古代からの問題になってきます。しかも女性の最初の職業だったといわれる娼婦との境界線を引くことも難しく、今後は絶対あってはならない哀しい人間の歴史としかいいようがありません。少なくとも今日の国際世論が慰安婦を認めなくなったことのほうが画期的だと言えるのです。

政治的な視点での慰安婦問題の本質は、冷戦下で展開されていた日本国内での代理戦争の尾を引いて、その先入観が産んだものだったということでしょう。東西冷戦が終わり、「保守」、「革新」の意味を失うにつれ、互いが互いの存在を守るために、相手を落とし込める手段を選ばなかった、そのひとつが慰安婦の強制連行があったとする吉田証言だったはずです。

ちなみにその吉田証言に関しては、朝日新聞が特集の中で、「済州島で連行」証言は、裏付け得られず虚偽と判断だとしています。
「済州島で連行」証言 裏付け得られず虚偽と判断:朝日新聞デジタル
吉田氏が済州島で慰安婦を強制連行したとする証言は虚偽だと判断し、記事を取り消します。当時、虚偽の証言を見抜けませんでした。済州島を再取材しました が、証言を裏付ける話は得られませんでした。研究者への取材でも証言の核心部分についての矛盾がいくつも明らかになりました。

すくなくとも、朝日新聞が日本のみならず、国際世論までをも間違った方向にリードする原因をつくり、国際政治問題にまで広げる結果を招いてしまったこと、また、多くの日韓の人びとの心を傷つけた罪は大きく、慰安婦問題よりも、なぜ朝日新聞が、そのような過ちを生んでしまったのかの検証のほうが先だというのが筋ではないでしょうか。