米国土安全保障省が、IEのバージョン6から最新の11までのいずれにも、ハッキングを受ける可能性があり、マイクロソフトが対策を取るまでは使用を控え、他のブラウザを使うようにと勧告しています。セキュリティソフト会社ファイア・アイ が米企業へのサイバー攻撃を目的にハッカーグループがIEの不具合を探しているとしたものを受けてのものです。この種の問題で、政府が発表するというのも異例です。マイクロソフトから近々、修正ソフトが提供されますが、XPは対象外です。
米マイクロソフト、IEのバグ修正へ XPはサポート対象外 | Reuters
フラッシュ・プレイヤーをブラウザで無効にすれば、この脆弱性の問題は回避できるようですが、さて、この脆弱性に関する問題を機に、ふたつの変化が起こってきそうです。

ひとつは、これまでIEしか使わなかったユーザーが、他のブラウザ、おそらくグーグルのクロームか、ファイアフォックスに乗り換え、そのまま定着し、IEのシェアが落ちることです。が考えられます。もうひとつ考えられるのは、XPはアップデートに対応していないために、XPからWindows8への切り替えがさらに促されることです。
IE6〜11に影響のあるゼロデイ脆弱性、すでに標的型攻撃も確認 -INTERNET Watch

スマートフォンの場合はブラウザはグーグルのクロームか、iPhoneの場合はサファリでしょうが、ではPCでIEを使う人はどれくらいの比率なのでしょうか。統計の取り方でずいぶん発表されている数値が異なるのですが、StatCounterのデータで見てみると、PCでも全世界では、2012年7月にIEとグーグルのクロームの利用率が逆転し、現在では、クロームが50%近く、IEは23%程度にまで落ちています。

日本は比較的IEの利用率が高く、IEの利用がトップですが、それでもIEの利用率は減少傾向にあり、クロームが伸びてきています。そして、直近のデータで異変が起こっています。それまでは50%を超えていたIEのシェアが、39%にまで急激に落ち、クロームが32%へ、ファイアフォックスが22%へと急上昇していますが、IEの脆弱性も問題が影響したのでしょうか。そうだとすると、日本はセキュリティに関しては、海外に比べて敏感だと言えそうです。
日本では、今回のIEのセキュリティ問題が、これまで何気なく使っていたIEのユーザーがクロームやファイアフォックスに乗り換える動機となり、IEのシェアが落ちる可能性がでてきたのではないでしょうか。

■StatCounterによる日本でのPCのブラウザのシェア推移
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アメリカもIEの利用率が高いのですが、こちらも長期的にはIEがシェアを落とし、クロームが伸びるという傾向で、現在では30%前後でシェアを競い合う状況が続いています、しかし、直近にはわずかとはいえIEのシェアが落ちています。やはり今回のセキュリティの問題で、クローム優勢の流れが加速されるのではないでしょうか。それはマイクロソフトにとっては凶とでることになりそうです。

■StatCounterによる米国でのPCのブラウザのシェア推移
StatCounter-browser-US-weekly-200827-201418

ブラウザについては、IE離れが起こってきそうですが、ではどれくらい、まだXPが使われているのでしょうか。

コムスコアの統計でインターネットの利用状況から見たOSのシェアの変化を見ると、XPは急速に減ってきていますが、それでも全世界では15%程度は、まだXPが利用されているようです。しかし日本では、それ以上に買い替えが進んで、今週現在ではわずか5.4%に過ぎません。

■StatCounterによるインターネット利用におけるPCのOSのシェア推移
StatCounter-os-JP-weekly-200827-201418
米国もXPは急激に減ってきていますが、それでもインターネット利用のおよそ12%も占めています。まだ海外ではインターネット利用しているPCの15%程度がXPだというのは、ちょっとお寒い話ですが、このIEのセキュリティ問題を機にバージョンアップが進むことを期待したいものですが、バージョンアップが進めばこのIEのセキュリティ問題が「短期的」には、マイクロソフトにとっては吉となってきます。

しかし、政府から他のブラウザを使うようにという勧告がでたということは、イメージダウンは避けられません。ただでさえ、インターネット利用がモバイルに重心が移る中で、このトレンドに乗り遅れてしまったマイクロソフトがPCの世界でも存在感を失っていく姿は、いかに時代変化の波が急で激しものかを物語っているようです。