大阪市営地下鉄に乗ろうとホームで待っていると、来た電車が大阪市営交通110周年記念の「復刻ラッピング列車」でした。昨年9月から運行しているそうです。社内には、「大阪市営交通の110(いいお)話」の作品がポスターとして掲げられていました。
大阪市交通局|大阪市営交通110周年記念事業

大阪市営交通の110(いいお)話」
大阪市営地下鉄は、1903年(明治36)に路面電車の営業を開始し、1933年には、日本初の公営地下鉄として御堂筋線の梅田 - 心斎橋間が開業しています。NHKの朝ドラ「ごちそうさん」で、主人公「め以子」の夫「悠太郎」の地下鉄建設に取り組む姿が描かれていたことはご存知のとおりです。そうです、大阪は新しいコトにチャレンジする伝統、歴史のある地でした。

消費税アップにともない、驚いたのは、高速道路やタクシーの料金など国土交通省関連で便乗値上げではないかと感じるものがありましたが、大阪市営地下鉄はこの4月から初乗り料金が200円から180円に引き下げられています。首都圏とくらべて地下鉄料金が高すぎたのでようやく是正された感があります。

さて、大阪市営地下鉄も、ようやく駅売店がコンビニとなり、また梅田駅の商業施設「ekimo(エキモ)梅田」がオープンするなど、利権まみれのお役所仕事から抜け出しはじめた感がありますが、民営化がなかなか進みません。議会が機能不全に陥っているからです。自民をはじめ公明や民主系の会派が「議論が不十分」としてなんと市議会史上初とみられる3度目の継続審議となってしまったのです。

反対の理由が書かれているサイゾーの記事を見つけましたが、そもそも経営ということをわかっていない人の記事だと感じます。税金を投入してつくった地下鉄を、黒字化してきたから民間に売るというのはその資産をまるでタダで渡すに等しいということだとしていますが、税金を投入した分は資産として計上されているので、別にタダで渡すこということにはなりません。

終電の時間延長に関しても、「公営であっても、利用者目線の改革はできることの証左にも見える」としているのですが、私鉄からもメンバーが入って改革に取り組んだから、そうなったということがすっかり抜け落ちています。最初から民営化には「反対」という社会主義的な発想が鼻につきます。
維新の会と関西財界の利権の構図…大阪市営地下鉄民営化で露呈!?市民にしわ寄せか(1/2) | ビジネスジャーナル

もっと冷静にメリットとデメリットが書かれているのがこちらです。上の記事が取り上げた問題についても詳しく解説されています。
大阪市営地下鉄民営化のメリットとデメリット | 太田康広 数字・データの裏を読む|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー

さて、大阪市地下鉄民営化に対する自民党や公明党のモラトリアムに対しては、大阪市民は十分に怒っていいのではないでしょうか。市民でなくとも、大阪市は関西経済の鍵を握っているので、関西圏の人も怒っていい話だと思います。

共産党と違って、自民党も公明党も民営化に正面切っては反対できません。だから「議論が不十分」として、決定を引き伸ばしているとしか映らないのです。もし議論を深めたいなら、積極的に対案を示して、議論を促すのが健全野党だと思うのですが、前向きの議論ではなく、維新の会に得点を与えたくないという意図を感じてしまいます。どう考えてもアベノミクスとは異なる立ち位置であり、だから安倍さんに橋下市長が愚痴を言うということになるのでしょう。
橋下氏、安倍首相にグチ? 大阪市営地下鉄民営化で「市議会・自民が反対する」と伝える - MSN産経west

さて、先日の田原総一朗さんのブログでいい提起がありました。いまは「考える」時代になってきたとおっしゃっています。そのとおりだと思います。
いま、世界情勢が非常に複雑化している。アメリカは大事な同盟国だ。だが、ロシアとの関係も疎かにできない。中国と韓国は、「反日」という1点で結びつきを強めつつある。そのなかで僕たちは、日本をどうすべきか。どういう国家を目指すのか。日本に求められているのは、「強くなる」ことではなく、「賢くなる」ことだと僕は思っている。まさにいま、僕たちは「考える」べき時なのだ。
田原総一朗さんは、世界情勢について書かれているのですが、世界のなかで日本がどのような立ち位置に身を置くかの問題だけでなく、経済でも、社会でも、課題が複雑化し高度化してきているので、かつてのように賛成か、反対かのポジションをとるだけでは、「思考停止」に陥ってしまいます。

将来を見据えて、どうあるべきかを考え、よりよい解決のために知恵を生むこと、また知恵をあつめること、さらに言えば、大きな決断ができる能力が問われてきているのだと思います。「考え、決める時代」とも言えそうです。

大阪の自民党の方に問いたいのは、「では、大阪をどうしたいのか、凋落しつづけてきた大阪の活力をどう再構築するのか」についてどのようなビジョンや政策をお持ちなのかです。かつて大阪が持っていた気質を取り戻し、大きな決断に向かう胆力や勇気に期待します。