目のつけどころでシャープらしさを感じるのが、この4月から発売される「ヘルシオ お茶プレッソ」です。茶殻を残さず粉末にしてお茶ができるマシンで、カテキンが急須でいれた約1.9倍多く含まれ、またクロロフィルや食物繊維を含まれ健康にもいいそうです。しかしその着想はいいとしても、なにか家電業界の限界を感じてしまうのです。
お茶メーカー「ヘルシオ お茶プレッソ」を発売 | ニュースリリース:シャープ
もしネスレのネスプレッソやティーマシンがこの世になければ、どれほどのニーズがあるのかは別にして、手放しで面白いと思うのですが、結局は「新しいモノ」をつくったけれど、「新しいビジネス」はつくっていません。

ネスプレッソの場合は、マシンを買ってもらえば、あとは消耗品としてのカプセルを継続的に買ってもらえます。カミソリでいえばスティックを買ってもらえば、替刃もその後に買ってもらえます。インクジェットプリンターで言えば、プリンターを買ってもらえばインクや場合によってはペーパーを買ってもらえます。インスタントカメラのチェキを買ってもらえば、専用フィルムが買ってもらえます。これらは「インストール・モデル」といわれるビジネスモデルで、利益は後者の消耗品で継続的に得られるわけです。しかも、そちらの消耗品を売るビジネスのほうが利益も大きくなります。

モノだけを売るビジネスでは、一回買ってもらって、あとはそのモノが壊れて買い替え時期がくるまでは、リピート購入が期待できません。いわゆる「インストール・モデル」ビジネスとはビジネスの大きさも違ってきます。

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2012-02-10


それと「粉末のお茶」はもうすでに多くの種類が世の中に売りだされています。手軽さを訴えるもの、また濃さが楽しめることを訴えるもの、もろにシャープと同じように健康を訴えるものもあります。
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あちらはお茶を売るビジネスで、こちらは家電を売るビジネスだといっても、目的は同じなので競合関係になってきます。コンビニエンスストアとファストフードが、朝食やランチで競合関係にあるのと同じです。目的が同じだから競合するのです。

さてどちらに分があるのでしょうか。「挽きたて」と「袋入り」で違いがでてくるのでしょうか。そうでなければ、最初にマシンを買う必要のない手軽な「袋入り」のほうに分がありそうです。
ということは、もし「ヘルシオ お茶プレッソ」が話題になり、粉末茶の良さが広く認識されるようになると。粉末茶を売る会社には好都合で、敵に塩を送ることになってきそうです。

こうやって見てみると、「モノ」にこだわるというよりは、「モノ」しか発想できない、つくれない、「ビジネス」を創造できないから、「モノ」にしがみつくしかないという限界すら感じてしまいます。なにもしないよりはマシかもしれませんが。

今日はビジネスの「仕組み」対「仕組み」の競争の時代、またビジネスの「仕組み」をつくり変える時代へと次第に移ってきています。シャープがコモディティ化し、価格競争が激化する一方の家電ビジネスから本気で抜けだそうとするなら、「モノ」のイノベーションだけでなく、大きくコンセプトを変え新しい分野を生み出すか、ビジネスの仕組みそのものの変革が必要になってきているのではないでしょうか。

シャープは新型iPhoneの液晶パネルを受注し、生産に入っているということですが、「モノ」しかつくれない会社が生き残っていくためには、「部品を供給するビジネス」に徹するか、軸足を移していく道を選ぶほうが賢明かもしれません。
シャープ新型iPhoneパネル量産へ - : nikkansports.com


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