貿易赤字が過去最大になったことに関連して、海外で生産された日の丸家電の輸入が増えていることも一因だとするニュースをTBSが流していたようです。TBSは家電量販店に並ぶ日本ブランドの電気製品が、日本で組み立てられ、製造されているとでも思っていたのでしょうか。

都内の家電量販店。圧倒的に多いのは日の丸家電。しかし、商品の裏側を見てみると、中国、マレーシア。実は海外で生産され、輸入されたものが目につきます。

 「安ければいい。消費者的には」(消費者)
 「円安になったんだから、日本で作れば」(消費者)

 長年続いた円高と安い労働力を求め、日本メーカーの多くが生産拠点の海外移転を進めたためです。

それにしてもこのニュースに流れた証券会社のシニアエコノミストの人のコメントは、この方が今のグローバリゼーションの時代の流れをほんとうに理解しているのか疑わせますが、きっと発言の一部を切り取った編集でそうなってしまったのでしょう。

このニュースでは「去年、初めて電子機器の輸入額が輸出額を上回る可能性が強まっています」としていますが、もはや「日の丸家電」はふたつの意味で変節しています。

第一は、いくら日本のブランドと言っても製造は中国やASEANを中心とした海外拠点に移ってきています。この流れに逆らい、プラズマや液晶パネルを国内生産に切り替えたシャープやパナソニックは完全に敗北してしまいました。

第二に、「日の丸家電」の代表格であった電子機器は、その多くが競争力を失ってしまいました。「ものづくり」に固執し、組織が硬直化してしまい、時代の流れに乗り遅れたばかりか、イノベーションを生み出せなくなってしまったのです。

スマートフォンやタブレットPCなど、成長分野で「日の丸家電」が通じるのは国内ぐらいでしょう。SONYのスマートフォンも国内ではサムスンのギャラクシーの不振から第二位に踊りでたようですが、世界市場のシェアから言えばほんの小さな存在にすぎません。

日本国内ではNTTドコモがiPhoneの扱いをはじめたこともあって、昨年の10月〜12月でiPhoneの国内シェアが68.7%に達するほど販売台数を伸ばしました。このiPhoneもブランドはアップルですが、製造は中国で、中国からの輸入になります。

電子機器の最終製品で、日本のブランドが通じる分野といえば、デジタルカメラ、デジタル複写機や複合機、またゲーム機が浮かんできますが、デジタルカメラはスマートフォンに普及機市場を侵食され、一眼レフ、またコンパクトタイプでも高級機種しか売れなくなっています。ゲーム機も任天堂が赤字に苦しんでいるように、やはりスマートフォンの台頭でもはや成長分野ではありません。

こういった日の丸家電の現状については、「熟年の文化徒然雑記帳」さんも憂い、取り上げていらっしゃるので参考になると思います。

円安になれば輸出が増えるという期待は裏切られてきました。というかなぜそんな風に考えたのかのほうが不思議なぐらいですが、いやJカーブ効果であともう少しで輸出が増えてくるといった神頼みでは克服出来ないもっと本質的な問題は、成長分野を生み出せなくなっており、国際競争力を失ってきたほうがはるかに問題です。

ちなみに、海外生産は貿易収支としてはマイナスになりますが、海外子会社などからの所得収支としてプラスになってきます。国内での雇用が増えないということはありますが、日本に限らず、先進国では雇用は製造業からサービス業に移ってきています。雇用はサービス産業にどう育ってもらうかのほうが重要です。

それよりは、成長分野を生み出したり、また成長市場を取り込むことに成功していないことを直視すべきなのでしょう。

ニュースのなかで、消費者の「円安になったんだから、日本で作れば」という声も紹介されていますが、いまさらという感じです。たんに製造原価が海外のほうが安いというだけでなく、円高であれ、円安であれ、為替変動で振り回されてきたことに企業は凝りて、為替変動のリスクを減らす仕組みをつくってきたのです。

そのために海外に投資を行い、生産拠点を広げて来たのです。日本での製造を増やそうと思うとまた同じ設備投資が必要になってきます。市場が急成長していればそれも可能でしょうが、多くの分野ではそれを望めません。

海外生産比率が高まったのは、家電だけではありません。衣料品でも日用雑貨などもブランドはジャパンでも、製造は海外というのがもはや普通で、たとえ、日本ブランドの製品がいまより売れたとしても輸出が伸びることには直結しません。その多くは中国やASEANから出荷される、あるいは好調の自動車もアメリカ向けの多くが北米で生産されるので、日本からの輸出という形にはなりません。

「去年、初めて電子機器の輸入額が輸出額を上回る可能性が強まっています」としていますが、市場が急成長してきたスマートフォンやタブレットPCはほぼ輸入品です。日本の電子機器の最後の砦といえばデジカメとデジタル複写機が代表格ですが、これらも海外生産のほうが多くなっています。

つまり日本はモノの売り買いで成り立つ貿易から、次第に海外に投資し、現地法人からの所得収支へと軸足が移ってきています。先進国としては普通の姿です。日本はすでに米国についで所得収支では世界第二位です。

所得収支は、2009年、2010年でいったん減少しましたが、再び増加してきています。ちなみに2012年の所得収支は14.7兆円でした。

所得収支の推移 - 日本経済のネタ帳

所得収支が伸びても、原発が止まり、原油やLNGなどの燃料輸入が急増したこと、そこに円安が襲ったことで貿易収支の赤字となったのです。もともとサービス収支は赤字なので、所得収支でそれらの赤字を埋めることもできなくなってきています。

為替変動を神頼みするよりは、成長分野の創造、成長市場の取り込みだけでなく、日本は、「ものづくり」と「サービス」、「システム」などを組み合わせた産業の高度化、高い生産性の実現をはかっていかなければなりません。もう「ものづくり」単独飛行の時代は過ぎたのです。

アベノミクスは、池田信夫さんがおっしゃる「偽薬(プラシーボ)効果」で経済に明るいムードをつくることには成功しました。

ビジネス現場から言えば、アベノミクスが「偽薬(プラシーボ)効果」に過ぎなくとも、経済活動が活発になればいいのですが、ようやく経営マインドが好転し、積極的な設備投資を行う企業も増えてきたので、そちらに期待したいところです。


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