「大阪に、たったひとつ、なかったもの」として大阪梅田駅に誕生した三越伊勢丹が業績不振から、来春には売り場面積の6割を返上し、隣接する専門店ビル「ルクア」と一体改装することが発表されています。この梅田店の不振でJR西日本完全子会社の運営会社「ジェイアール西日本伊勢丹」も、約100億円の債務超過に陥ってしまいました。今夏から一部を除いて休業し、改装工事にはいるため、開業からおよそ3年で縮小と根本的な軌道修正に追い込まれたことになります。

実際に行ってみた時に感じたのは、店内に活気がなく停滞していることで、しかも何が特徴なのかよくわからず、この状態だと経営も危ういのではないかと余計な心配をしてしまう状態だったので、売り場を縮小しての出直しのニュースにも驚きはありませんでした。

阪急阪神グループは、梅田に阪急百貨店と阪神百貨店の2店舗を構え、さらに大丸百貨店があって、そこに三越伊勢丹が加わったことは、百貨店梅田戦争ともいえる顧客争奪戦になることは当初から予想されていたことでした。

そしてJR三越伊勢丹が敗北し、三越伊勢丹の出店に備えて全面リニューアルを行い、一昨年末にオープンした阪急百貨店梅田本店の一人勝ちとなりました。

阪急百貨店梅田本店のリニューアルに向けてのコンセプトは、「わくわくする、行きたくなる『劇場型百貨店』」で、百貨店のあり方そのものを見直すことが成功したのでしょう。百貨店のテーマパーク化です。

4月から12月の8ヶ月の売上推移で見ると、阪急梅田本店は、前年は改築のために売り場が減少していたので対前年比はあまり参考にならないとはいえ快進撃です。
同じグループの阪神百貨店も低迷、大丸梅田店も昨年の6月と11〜12月に対前年比でプラスを確保したものの、残りの5ヶ月はマイナスでした。しかし、JR三越伊勢丹の梅田店はそれ以上の厳しい業績だったのではないでしょうか。ちなみに京都店と合わせて2013年4月〜9月累計の売上高が-13%でした。

「大阪に、たったひとつ、なかったもの」ということでしたが、なにがなかったのかがよくわかりません。それは「伊勢丹」のブランド、東京の百貨店だったのでしょうか。三越は阪神淡路大震災での被災を機に撤退しています。

決して立地が悪いとはいえないにもかかわらず、梅田の場合は、JR三越伊勢丹にわざわざ寄って買い物をする「理由」が見当たらないのです。「大阪に、たったひとつ、なかった」三越伊勢丹にブランド力があるとはいっても、大阪ではそのブランドは浸透しておらず、またいくら大阪の百貨店とは違う百貨店と言っても、「百貨店」では期待を持てというのには無理があります。

今までにないコンセプト、また集客力のあるフロア構成、商品、サービスなどの特徴を打ち出せなかったのですが、もしかすると、運営が「ジェイアール西日本伊勢丹」と「三越伊勢丹ホールディングス」のふたつの組織で中途半端になってしまっていたのかもしれません。

いずれにせよ、もう大阪では百貨店も飽和状態で、百貨店が集積する北と南での競争もあり、いくら東京流を完璧に持ってきても、しょせん百貨店は百貨店に過ぎず、それでは行き慣れた百貨店を利用することになります。

しかも、今は、株高で恩恵を受けた高額所得者が高級品を買って、多くの百貨店が売上増のボーナスを得ていますが、それもいっときのことで、業態がもう成熟してしまっていることには変わりありません。

JR三越伊勢丹も改装を機に、なぜ敗北したのかをよく考え、壮大な実験場を創るつもりで、おもしろく、これまでなかった体験を楽しめる商業施設にしていただくことに期待します。