インスタントカメラの「チェキ」がヒットしたことを受けてだとも思いますが、富士フイルムが、iPhoneやアンドロイドのスマートフォンで撮った写真をWi-Fi経由でプリントできる「スマホdeチェキ」の発売を発表しました。これがどれだけウケるのかに注目しています。

モバイルで撮った写真をその場でプリントし交換しあう、その写真のフレームなどにいろいろ書き込むことで、そのシーンで感じた気持ちを思い出として残せる。このアプローチは、実は富士フイルムとしては二度目のチャレンジです。

覚えている方は少ないと思いますが、携帯で撮った写真を赤外線通信でプリントできる「Pivi」という製品でした。期待を込めて発売したものの今ひとつ売れず、2010年9月に生産中止となってしまいました。

Piviが失敗したのは、さまざまな理由があったと思います。画像を送るのに時間がかかり、また画質もそもそもの携帯の写真の解像度が低かったこともあって今ひとつでした。

マーケティングも、人気があり知名度のあった「チェキ」と「Pivi」のフイルムの仕様が異なってしまったために、別のフイルムを買わなければならず、そのために混乱を避けるために、「チェキ」のシリーズではなく新たな「Pivi」という新しいブランドを使ったために、ブランド資産を活用できず、またマーケティングの連動がうまくできなかったこともあったと思います。

さらにインパクトのあるCMをつくろうと少年隊の東山を使ったCMが消費者の強い反感をかったばかりか、「Pivi」がなにをするためのものかがまったく伝わらないものでした。あれほどコケてしまったCMも珍しいのではないでしょうか。

そこにはマーケティングにとって大切な教訓がありました。

実は「Pivi」は発売前に「Pivi」を体験してもらったリサーチでは高い評価を得ていたのです。当時プロジェクトに関わっていたメンバーは誰しも、確実に潜在ニーズはあると確信していました。しかしいくら潜在ニーズがあっても、消費者の人に体験したことのないコトを伝えることの壁にぶつかり、またマーケティングがギクシャクし、結果は屈辱的な敗北を味あわされてしまったのです。つまりいくらいいコンセプトを発見しても、それが製品、プロモーション、価格、買い場づくりの質や一貫性に欠けるとうまくいかないという手痛い教訓でした。

しかし当時とは状況が大きくかわりました。

まずはスマートフォンで撮る写真画質が飛躍的に向上したことです。さらにそれと比例するようにスマートフォンで写真を撮る人も、撮るシーンも、撮る枚数も圧倒的に増えました。

誰もが、いつでも写真を気軽に撮れる手段が普及したために、写真を撮る枚数(ショット数)は年々伸びてきています。デジカメとフイルムカメラだけでも2005年のショット数が186億ショットだったのが、2010年には280億ショットと増えましたが、さらにスマートフォンのショット数を加えるとさらに飛躍的に伸びてきていると考えられます。
 29

つまり写真を撮る文化がより身近なものとなり、また広がったのです。

通信もWi-Fiが普及し、また通信速度も向上しました。大容量化した画像もスピーディにプリンターに送れるようになりました。

さらにスマートフォンなら、アプリを提供することで、さまざまなテンプレートを活用することもでき、写真のオリジナルな加工が気軽に楽しめます。

しかもいったんはもう市場がなくなると言われていたインスタントカメラ「チェキ」も見事に復活しています。
チェキ、再ブレイクとは面白いね。 

舞台が揃い、機が熟してきた、再チャレンジがあっても良い頃だと思っていた矢先の「スマホdeチェキ」の発売の発表でした。

ともすれば、スマートフォンがコンパクトデジカメに代替するようになり、写真関連業界には逆風が吹いているかのように見えます。確かに、コンパクトデジカメラは2008年にピークを迎えたものの、スマートフォンの普及でそのわずか4年後の2012年には50%以上も減少し、さらに2013年1‐11月の世界の出荷台数は前年同期比42%減少という、まるでジェットコースターで下降するように市場の縮小が進んできています。

確かに、カメラ各社ともスマートフォンと棲み分けできる領域として高級化にむかってシフトしてきていますが、もうかつてのようなデジカメの急成長は望めません。

しかし写真がより身近になり、写真を撮る生活習慣が一般化したことで、写真を撮るハードの市場がたとえ縮小しても、ショット数が増えてきたことは、写真を加工したり、見て楽しむ潜在市場は大きく広がってきているのです。写真を楽しむ方法、つまり写真を撮ることが入り口とすれば、写真の出口のリッチ化にビジネスチャンスが潜んでいるのではないでしょうか。

おそらく、写真を巡る市場は、「写真を撮る手段を提供する」から、「写真を楽しむ新しい手段を提供する」に重心が移ってくるのだと思います。そういう視点で見れば、「スマホdeチェキ」は時宜を得た発売です。

しかしなによりも、一度失敗したプロジェクトに、再びチャレンジすることを決めたこと、それを可能にした企業の文化には敬意を評したいと思います。製品の性格からすれば、決して主役のポジションが取れるというものではなく、大ブームを引き起こすという類のものではないでしょうが、写真を楽しむ新しい文化として定着してくれればいいなと願っています。

まずは試してみたいので、さっそく今週にでも買うことにさせていただきます。



SFAによる顧客管理ならアクションコックピット

新世代SFA営業支援システム アクションコックピット

営業現場を「共有する。発見する。かしこく動く」に進化させるためのツールです。