吉野家が「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」の新メニューを投入し、吉野家が長年追求してきた「うまい やすい はやい」のコンセプトを「うまい やすい ごゆっくり」に変えたことに驚いた人もおられたと思います。あきらかな戦略の転換を感じさせたからです。

普通に考えれば、「はやい」から回転率があがり、それは客数増につながります。「ごゆっくり」では回転数が落ち、それを客単価増で補うということになります。実際、客の在店時間も牛丼並盛なら7〜8分が、「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」の場合、15分から20分へと伸び、回転率が悪くなることも予想されました。

しかし、蓋を開けてみると、その常識が破られたのです。

12月の吉野家の月次情報が発表されましたが、なんと既存店の客数が減るどころか、対前年同月比18%増で、売上高も16%増加したのです。ちなみに、すき家の12月は既存店の客数が-5.5%減、売上高が-4.7%減、松屋は客数が-1.5%減、売上高が-0.1%減で、吉野家の一人勝ちとなりました。

もうひとつ注目したい指標があります。牛丼の並が280円で、「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」は並で580円と倍以上の単価です。普通に考えれば、「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」がヒットすれば、客単価も大きく上がるはずです。

確かに、3月以降の既存店の客単価の推移を見ると、4月に行った牛丼の値下げ効果で、昨年の5月に売上高、客数が急増しましたが、客単価が対前年同月比で11.5%も下がっています。それが12月には、-1.6%に改善されてはいるものの、ほぼ前年並でした。
 
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ふたつのことが言えると思います。

ひとつは、回転率を犠牲にしても、集客効果が著しく高まったために、客数増となったこと。つまり吉野家の魅力が高まったということです。

もうひとつは、格安の定番メニューと付加価値が高く、高単価のメニューとのミックスが成功したことです。つまりメニューに幅が生まれ、選択肢が増えたのです。

そして実際に店舗に行ってみると、休日ということもあってか、ファミリー連れの姿が目立っていました。データはありませんが、おそらくこれまで吉野家には行かなかった客層も来るようになったのではないかと思えます。

円安によるコスト上昇で、牛丼の値引き合戦はいつまでも続けられるとは思えません。しかも、第57期第二四半期報告書によれば、4月の牛丼値下げで、牛丼の客数は1.5倍にのびたものの、牛丼以外のメニューの客数が予想を超えて落ち込んでしまったという反省もあったのでしょう。つまり値下げ競争だけに頼っても将来はないと見たのだと思います。
第57期第2四半期報告書(平成25年3月1日〜平成25年8月31日)(PDF)
 
同報告書によれば、吉野家は中期経営計画に基づいて、価値づくり、環境づくり、構造づくりの3本柱で再成長戦略を進め、「気がつけば吉野家」という存在感を高めることを目指しているようですが、成功した戦略は、「まさか、なるほど」の世界だとまたあらためて痛感させられます。

小手先のマーケティングではなく、価値を高めるマーケティングがファーストフード業界に限らず求められているのでしょう。マクドナルドが、アメリカン・ヴィンテージ50’sとして期間限定のメニューを投入してきましたが、どうでしょうね。なにかピンときません。どうしても、かつてのビッグアメリカ・キャンペーンの焼き直し、優等生的な常識の範囲に収まってしまって新鮮な驚きを感じないのが残念なところです。
 

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