積水化学が、走行距離3倍という車用電池の新材料を開発したと日経が報じています。もし本当なら大変な発明です。1回の充電でガソリン車に匹敵する600キロメートル程度の走行が可能になり、一挙に電気自動車時代を切り開くことになりそうです。ただこれまでも見事に裏切ってきた前科を持つ日経のスクープ記事だというのと、また積水化学からプレスリリースがでていないので本当かどうかははかりかねます。事実なら素晴らしいことです。

電気自動車が普及しないのは実用性に問題があるからです。ネックは電池です。充電スタンドが少ないことではありません。

価格が高く、自動車そのものの走行距離が街の中を巡回する程度しか保てない、充電に時間がかかる、もし電池切れを起こすと大変、それでは特殊な需要しか生まれません。現在の電池性能では電気自動車を商業ベースに乗せるには限界があります。

米国のテスラのモデルSが、最大500kmの航続距離を実現して大ブレークしたことで、鍵は走行距離だということを証明したことになります。しかし、電池を大量に搭載するためにまだ価格が高く、自ずと高級車に限定されます。しかも、テスラは、このところ続けて3件、電池が原因の炎上事故を起こしており、やはり電池はまだやっかいな存在なのです。

電気自動車時代が本格的に幕開けするかどうかは、ひとえに電池の世界で画期的なイノベーションが起こってくるかどうかにかかっているわけですが、化学の世界はそんなイノベーションがいつ起こるかは予測できないのです。

夥しい種類の材料のなかから、最適な組み合わせを見つけ、また組み合わせの条件を見つけ出す試行錯誤を繰り返す中で突然なにかが発見され、それが飛躍的なイノベーションとなるというのが化学の世界では一般的です。なかには、ペニシリンやポストイットのように実験中の失敗が大きな発明につながったという例も少なくありません。

これが18か月ごとに性能が倍になるムーアの法則が効く半導体とは異なるところです。化学の世界の独特のイノベーションの特徴だと思います。だから、「化ける」の文字がついているのでしょう。

電気自動車の“水戸黄門”とも異名を持つエリーパワーの吉田社長が、ダイヤモンド・オンラインで、「リチウムイオン二次電池は、2012年にブレイクする」と明言されていましたが、それは希望的観測であって、現実にはそうなりませんでした。

現実は、ブレークするどころか、 2012年のリチウムイオン電池部材の世界市場規模は、前年比 105.4%程度で終わり、また今年も前年比101.4%にとどまる見通しのようです。電気自動車が本格的に立ち上がらないとリチウムイオン電池もブレークしません。

電池のイノベーションでは、今年の春に米国のイリノイ大学が充電時間が従来の1/1000, 蓄電量が30倍の超高性能電池を開発したと発表しており、また産業技術総合研究所が五鈴精工硝子(大阪市)と共同で、リチウムイオン電池の容量を約2倍に増やすマイナス電極を開発したといったことも発表されていますが、リチウムイオン電池のイノベーションの遅れから、自動車メーカー各社が燃料電池のほうに軸足を置き始める動きを見せています。


さて燃料電池が本命なのか、はたまた今回記事になったようなリチウムイオン電池の容量の飛躍的なアップでやはりリチウムイオン電池が電気自動車時代を切り開くのか、いずれにしてもその基幹となる技術を日本が抑えることができるのかはほんとうに興味深いところです。


追記;積水化学からニュースリリースがでました。画期的な技術だと感じます。
塗工プロセスによる大容量フィルム型リチウムイオン電池開発|積水化学 : 


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