連合が定期大会で、2020年をめどに1000万人の組織を目指して、非正規労働者への働きかけを強めるなどとした運動方針を採択したようです。また、これまで「デフレの原因は賃金の下落だ」と主張していた連合としては、来年の春闘はアベノミクスと呼応して、賃上げ要求にシフトするように各組合に古賀会長が激を飛ばしたといいます。
まあ、賃上げ要求はしっかりやってくださいという感じですが、1000万人体制をめざすということは威勢はいいとしても、少し現実味がなさそうな感じがします。

厚生労働省の労働組合基礎調査によると、労働組合に入っている人は、平成6年の1270万人をピークに減少傾向が続き、平成23年には1000万人を切り、今や二年連続で過去最低を記録して、昨年は989万人という状態です。
組合の推定組織率も長期的に下落してきており、平成19年から平成23年にいったん下落に歯止めがかかったのですが、昨年の6月末時点でついに17.7%にまで落ちこんでしまいました。つまり組合に入っている人は6人に1人強で、かなり少数になってしまったのです。
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連合が増えてきた非正規労働者の加入を促進しようという気持ちはわかります。しかし、パートタイム労働者の組合員数は平成19年の59万人から平成24年には84万人と増加し、いったんは組合員の減少の歯止めとなったのですが、それでも再び組合員数が減少し始めたことを考えると、非正規労働者への働きかけで組合員が増加に転じることが可能かはかなり疑問です。

連合傘下の組合員数は669万人で組合加盟者の67.7%をカバーしているとはいえ、1000万人体制を目指すならば、そうとう発想の転換が必要でしょう。

さて諸外国を見ると、社会主義が発達したヨーロッパ、とくに北欧は組合の組織率が5割から7割と高いのですが、日本に限らず組合の組織率は低下してきているようです。たとえばアメリカも1983年には20.1%をピークに、それ以降は徐々に低下し、現在では13%強でしかありません。
どうも職業構成の変化があり、また働き方も変化してくると、「労働組合」そのものが時代変化に適応できず、斜陽化してきていると考えざるをえません。

非正規労働者を組織化することに異議はありませんが、ただやはり改善策、時代の変化の後追いでしかないように感じてしまいます。ほんとうに連合が目指すべきは「労働組合」そのものの変革ではないでしょうか。

働くものにとって、魅力ある、あるいは加盟してメリットのある「労働組合」とはなにか、その役割を根本から見直し、再定義することが求められているように感じます。

なぜ組合があるのか、組合に入ってなんのメリットがあるのかが揺らいできたから、組合も衰退してきたのです。いくら賃上げ闘争を行って成果をあげたとしても、非組合員にその成果が波及する時代でもありません。非組合員が多いということは、現実は組合とは関係のない、労働市場での需給関係が賃金に反映しているのが現実でしょう。

組合に入るメリットというと、最初に就職した若い頃を思い出します。オープンショップの組合だったので、組合に入るかどうかは本人の自由意志でした。当然組合に入るように誘われたものの、なかなか組合に入らないために当時の組合の委員長に呼び出され、幾度も組合に入るように説得されたのですが、平行線をたどったままでした。組合に入るメリットがなにも感じられなかったからです。

「組合が賃上げ闘争をやったその成果を君はダタ乗りしている」とすら言われましたが、組合がストをやって賃上げに上乗せした額と、ストでの給与減額分と組合費を合計するとほぼ同額なので、組合の活動になんの意味も感じなかったのです。しかも当時はかなりハードな仕事を担当させられていたので、仕事の中味を考えずに、同じ勤続年数ならみんな同一賃金だという組合の考え方は到底納得できるものではありませんでした。だから非組合員にまで会社と組合の協定を及ぼさないで欲しいというのが正直な気持ちでした。

賃上げで闘うことも結構ですが、それだけが働く人の求めていることなのかというと疑問で、ほんとうに現代の働く人に役立つ組合の機能、組合に入ってメリットのあることはなにかから再構築しないと、加入する魅力がなくなってきているのでしょう。

たとえば、日本の働く人達にとっての大きなリスクは労働力の流動化が上手くいっていないことです。産業や企業によっての浮き沈みが激しく、真面目に働いていたとしても突然リストラの憂き目にあうということも少なからず起こってきています。積極的に転職して成功する人はいいのですが、誰もがそうできるというものではありません。

北欧の組合は、会社のリストラには反対せず、リストラされても組合のネットワークを駆使して、次の働き先を見つけてくれると聞きますが、そういったいざというときの収入や働き先の保証をしてくれる組合なら、組合に加入する新しいメリットも生まれてきます。

かつてのように、国と組合の間で、また企業と組合の間で、資本主義か、共産主義かの代理戦争をやっている時代はとっくに終わっています。それに職業も、働き方も、職場のあり方も多様化してきた今日に、ほんとうに働く人々にとって魅力を感じる組合とはなにかをを問い返すことが、組合の進化の早道になるでしょうし、また組合を進化させることこそ連合の社会的な使命ではないかとすら感じます。

 

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