新しいiPhone5CとiPhone5S、またiOS7の発表がありました。いやあ、驚きました。新しい機能とか、新しい時代を拓く未知の体験に驚いたのではありません。指紋認証がホームボタンを押すだけでできるとはよく考えられているとは感じても、それ以上でもそれ以下でもありません。NTTドコモでの販売も、周知の話でした。

しかし、それにもかかわらず驚いたことがいくつかあります。

まずは、アップルからサプライズといえるに値する目新しいものがでてこなかったことです。そのこと自体が、スマートフォンの基本的な技術や仕組みやは完成し、成熟してしまったということを象徴しているようです。さらに他のものも、イノベーションを起こすハードルが極めて高くなり、それをクリアできなかったのでしょうか。しかし、これも一抹の期待はあったものの、たぶんまだ出てこないだろうと想定されたことでした。

それよりも驚いたのは、ハードのデザインも、NTTドコモの取り扱い開始も、指紋認証についても、今回はさまざまな情報が漏れていたのですが、それらがあまりにも正確なものだったということです。あの秘密主義のアップルが情報のダダ漏れ状態になってしまったのです。

それは事業が広がり調達先が広がり過ぎた結果なのか、調達先へのアップルの支配力の低下なのでしょう。たぶん両方だと思いますが、部品メーカーへの緘口令が効かなくなってしまったようです。

むしろ、中国最大のキャリアである中国移動通信(チャイナモバイル)との販売提携の話がなかったようで、そのことのほうが意外でしたが、この提携もおそらく時間の問題なのでしょう。

3つ目は、アップルの、というよりはジョブズの頑なともいえる集中と選択路線、また価値重視の戦略が緩められ販売台数やシェアを取りに来たことです。iPhone5CとiPhone5Sの2機種が並行して販売されますが、iPhone5Cは16GBモデルが2年の契約条件付きで99ドル(約9900円)、32GBモデルが199ドル(約1万9900円)の低価格です。価格を下げ、シェアを取りに来たのです。シェアを気にしないというジョブズ流からすれば大転換です。

「新しい市場を創造する」から「現実の市場に適応する」への転換ともいえるのではないでしょうか。

もっと驚いたのは、ほとんどのメディアは伝えていませんが、iPhone4Sは続投され、8GBがなんと無料だというのです。

日本でも無料になるかどうかはわかりませんが、少なくとも北米では無料になるのでしょう。この発表イベントを詳しくレポートしているギズモードの記事に小さく紹介されていました。

つまり、iPhoneは、iPhone5Sの16GBの199ドルから364GBの399ドルの価格帯、iPhone5Cの16GB99ドルと32GBの199ドルの価格帯、そして最後の切り札として8GB無料のiPhone4Sがラインアップされることになります。

選べるiPhoneになったのです。

高い利益率を守る、ブランド価値を守る、シェアを気にせずユーザーを確実に囲い込むというジョブズの思想は、急成長したスマートフォン市場の需要にアップルの供給力が追いつかず、そこにアンドロイドが参入する隙を生みました。結果としては市場を侵食され、販売台数でも大きく差をつけられ始めてきたわけですが、その状況を打開するために、アップルは価格帯別のバリエーションで挑んできたのです。

スマートフォンもユーザーが広がり、ニーズも多様化してきています。価格が高くともサクサク動くことを重視するユーザーもいれば、別にそれほど速く動かなくともいいというユーザーもいます。その選択にかなうようにしたことは、アップルも市場に合わせる普通の企業になったということです。

もうひとつのサプライズは、iOSを使っている人にしか通じませんが、マイクロソフトでいえばワードやエクセル、パワーポイントがはいったOFFICEにあたるアップルのiWorkが無料で使えるようになったことです。さらに画像ソフトのiPhotoとiMovieも無料になりました。
これは今はシェア争いの焦点になってきているタブレットの差別化として効いてくるのではないでしょうか。

今回の発表で、アップルがどこまでスマートフォン市場で挽回できるかははかり知ることはできませんが、日本市場でのドコモ参入、また巨大な中国市場を本格的に攻めること、また新興国需要が取り込める条件が整ったことで、販売台数を大きく伸ばすことは間違いないと思います。その代償としてただでさえ落ちてきた高い利益率は犠牲になってきます。

アップルの今回の発表イベントはアップルが限りなく普通の企業に近づいた記念イベントだったのかもしれません。

あとは「ワン・モア・シング(もう一つ)」の隠し球がいつでてくるのか、はたまたもはやアップルは世界を驚かす「ワン・モア・シング(もう一つ)」を生み出す創造性を失ってしまったのか、関心はどうしてもそちらに向かっていきます。

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