5月の貿易統計速報が発表されました。円安による輸出金額の嵩上げは当然としても、輸出数量が伸びるのかどうかが気になるからです。数量が伸びると製造業は活性化します。しかし、金額は前年よりも伸びているのですが、数量指数に関しては12ヶ月連続の減少という結果でした。「円安→輸出増」というステレオタイプな見方を書いている人が結構いますが、もうそろそろやめたらどうでしょうか。実体経済はそれほど単純ではありません。
それよりも、日経記事で、貿易収支が9939億円の赤字で、金額を最も膨らませたのはスマートフォン(スマホ)を中心とする通信機であり、NTTドコモが「ツートップ」に据えた2つの新商品が記録的な販売を記録していることが背景にありそうだとしていることに少しひっかりました。それほど「ツートップ」戦略の効果が絶大なのかと感じさせたからです。
ドコモのスマホ「ツートップ」で貿易赤字最大 :日本経済新聞 : 
それでいろいろ検索して調べてみると、確かに量販店でのPOSデータによるBCNランキングで、5月はXperia Aが躍進してトップに踊りでたこと、また発売された5月第2週以降に順調に販売を伸ばし、ソフトバンクモバイルの「iPhone 5」、auの「iPhone 5」を抜き、5週連続でトップに立っていることが伝えられています。同記事にNTTドコモの販売台数でのシェアのランキングがでてましたが、Xperia Aは25.1%、GALAXY S4が10.6%で、やはりXperia Aは絶好調のようです。販売前から高い評価が多く見られたので、すこし後押しすれば売れる機種なのでしょう。
2013年5月の携帯電話ランキング、「Xperia A」が躍進、「iPhone 5」も売れ続ける : 

かなりツートップに格差がでてきているようです。広告や店頭でのプロモーションはGALAXY S4のほうが目立っているようにも感じるのですが、日本ではサムスンのブランド力に限界があるということでしょうか。GFKの調査では、GALAXY S4が2位に躍り出たということですが、これはiPhoneを容量別に分けて集計しているからです。

Xperia Aが売れていることはいいとして、ドコモのツートップ戦略が効果を発揮しているのかどうかはまた別問題です。そちらは契約の純増数と番号ポータビリティ(MNP)による転入出の状況に変化が起こってこないといけません。

いやはや微妙です。新規契約から解約を引いたNTTドコモの純増数が9万1800件で、前月実績の1300件から大幅に伸びたことは効果があったといえそうです。しかし、ライバルのソフトバンクモバイルが29万8000件で17カ月連続の首位。KDDI(au)の純増数は22万7000件という結果と比べれば、まだまだ差が大きく、勢いの違いを感じます。
 
しかも、番号ポータビリティ(MNP)の転入出状況は、KDDIが8万1600件、ソフトバンクモバイルが5万2300件の転入超過だったのですが、NTTドコモは13万5800件の転出超過で、4月の12万5400件よりも転出が増えているのです。 

つまり、伸びる勢いでも成果がでておらず、他のキャリアに顧客を奪われている状況に歯止めをかけることができなかったということで、どちらかというと成果はでていないという感じでしょうか。

NTTドコモのツートップ戦略は、なにか筋の悪さを感じこのブログでも取り上げましたが、やはりという結果のようです。市場は、もっとユーザーの心のなかに入り込める切り口を探せとシグナルを送っているのではないでしょうか。