川崎重工が、理事取締役会で三井造船との経営統合に積極的だった長谷川社長と高尾副社長、それに廣畑常務の3人の解任を決議し、三井造船と進めてきた経営統合の交渉を打ち切ることを決めたことがニュースになっていました。クーデターといえば、クーデターなのですが、外野席から眺めていると、なぜ三井造船と経営統合しようとしたのかが見えてきません。三井造船は、ホームページを眺めるとこの5年間に年々営業利益を減らしており、平成24年度には当期利益が82億円の赤字に転落しています。
一方の川崎重工の船舶海洋事業は、川崎重工の売上高の7.9%を占めるにすぎず、川崎重工のなかでは、もっとも小さな事業で、こちらも平成24年第2四半期で「営業利益は、売上高の減少があったものの、受注工事損失引当金の繰入が減少したことなどにより、前年同期比4億円増益の10億円」ということですから、どう見てもうまくいっているとは感じません。経営統合すれば連結売上高は2兆円にはなるでしょうが、普通に考えれば、わざわざ不採算部門を水膨れさせて、利益を圧迫しかねないということです。
造船は、韓国・中国勢の増産により需給過剰状態で競争が激化しているので、今後とも受注が伸びるという市場環境ではなく、経営統合して購買を有利にしたり、合理化して競争力が増すという感じでもありません。

それは川崎重工が掲げている中期計画の「事業環境の変化に対し高い適応力を持ち、将来への成長投資を続ける収益力の高い企業」をめざすこととは相容れないリスクを抱えてしまうことになります。

考えられるとすれば、今後の川崎重工のエネルギー開発戦略にとって、三井造船が50%の株を持っている三井海洋開発の石油やガス精製技術が欲しかったということでしょうか。こちらは、平成24年12月期の連結決算で、経常利益 92億円、当期純利益 51億円と過去最高益を記録しており、しかも受注も順調に伸ばしてきています。

そのあたりの交渉内容は、取締役会の人たちも蚊帳の外で不透明だったというのですから、外野席からいくら邪推してもわかりません。

ただ今日は経営リーダーの戦略構想力や戦略遂行力の才覚が企業業績を大きく左右する時代になってきているので、まずは取締役会で解任決議まで通してみせた新経営陣の人たちの行動力には期待できるのかもしれません。それはウッドフォード社長を解任したオリンパスの取締役会の動機とはかなり違うという印象を受けます。

マスコミにもほとんど報道されなかった密かな造反劇があって、経営が実質的に世代交代し、それ以降に見事に経営危機を乗り切った企業もあるので、取締役会の造反というカタチでしか大きく経営が変わらないこともあるのでしょう。

川崎重工ご出身の古谷さんのブログ「雑感日記」もこの問題を取り上げられ、「今後の川崎重工の経営が、一皮むけた新しい時代に合った素晴らしい展開 になることを期待したい」と締めくくっておられますが、ぜひそうなってもらいたいものです。