一週間ほどまえのことです。ツイッターで、宋文州さんがこうつぶやいていらっしゃいました。「この頃の3次元プリント技術は凄いな。驚いた。いずれ鋳物、旋盤などの金属加工業は要らなくなる。」
夢を膨らませるいいのですが、それはやがてスマートフォンで空を飛べると言っているようなもので、思わず脊椎反射で「それはない」、宋文州さんには何の他意もありませんが、思わず、そうリツイートしてしまいました。
宗さんはもしかすると、iPhoneなどで有名になったアルミ削り出し技術のことをおっしゃっているのかもしれません。こちらもすごい技術です。削ったアルミは再利用されるのでご心配なく。

どうも3Dプリンターは誤解されているように感じます。銃がつくられたことがまた誤解を広げたのでしょうが、3Dプリンターは、技術が進めばもっといいものができてくる可能性を秘めているとしても、それでも原理的に限界もあるのです。

3Dプリンターについて再度整理してみましょう。3Dプリンターが注目されるようになったのは、クリス・アンダーソンが「MAKERSー21世紀の産業革命が始まる」で紹介してからです。この本が出版されたのは、2012年の10月23日となっていますが、そのおよそ1ヶ月ほど前に「大西宏のマーケティング・エッセンス」で3Dプリンターを紹介しています。

このタイトルにつけたように、「スマホのケースも、アクセサリーも」であってそれ以上でもありません。クリス・アンダーソンは「ロングテール」とか「フリー」とか新しい経済圏の特徴をうまくコンセプトにしてセンセーションをおこす人なので、マスコミも、また多くの人が、もしかするとオバマ大統領までもが、それに乗せられたという感じがしますが、あまりに暴走気味なので、追加して「3Dプリンタ − スマホを家でプリントアウトする日」という記事を取り上げ、「3Dプリンターは世の中を変えますが、スマホはつくれません」という記事も書きました。

想像してみてください。どうやって内部の精巧な基板やデバイスがプリントできるというのでしょうか。
その時に書いたことをもう一度引用しておきます。
新しい技術が生まれてくると、なにかそこに夢を描きたくなるのは自然なことです。そういった夢が、想像力をかきたて、また新しい発想を生みだしてきます。
ただ夢を描くことと、夢を実現する間には距離があることも現実です。すぐさまできることもあれば、夢を実現するためにはいくつものハードルを超えなければならないこともあります。たとえば、電気自動車。実用化にはまだまだ超えなければならないイノベーションのハードルが高いことは、すでに何度か書きました。なにもかもが半導体のような速度で性能があがっていくムーアの法則通りにはいきません。
3Dプリンターはパソコンから出力して立体物がつくれるということですが、ふたつの側面をもっています。

ひとつは簡単なものだと「モノが作れる」ということ、つまり製造そのものができるということと、もうひとつはモノをつくる前提となる、あれこれ検討するための「試作品」を簡単につくれるということのふたつの側面です。まずは、それが混同されています。

3Dプリンターが最初に製造の世界を変えるだろうというのは後者の方です。それでスポーツシューズのメーカーのナイキやアディダスが成功しているというフィナンシャル・タイムズの記事が日経で紹介されていましたが、こちらも開発の効率化やスピードアップの話です。

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もうひとつは3Dプリンターはユーザーが開発にも参加する時代、「イノベーションの民主化」という流れを加速する可能性を持っているということです。3Dプリンターは夢のある技術です。さらに3Dプリンターの可能性や応用について考えていただくために、詳しくは本日に発行するメルマガに書かせて頂きます。

SFAによる顧客管理ならアクションコックピット

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