グーグルが開発者向けのイベント「Google I/O」で、グーグル地図や定額音楽聴き放題など、アンドロイドやクローム向けの盛り沢山な新機能や新サービスを発表しました。勢いを感じます。
定額およそ1,000円の「Google Play Music All Access」は日本では非対応ですが、グーグル地図は面白そうです。経路検索も強化され、立体表示や、日本で言えば「食べログ」のようなZagatのレストラン評価も地図から確認できるようになっています。関心のある方は申しこめば招待状を受け取れ、先行して体験出来ます。早い人なら、もう招待状が届いたのでしょうか。日本だともっと先の話になるのかもしれません。


それらのなかで、今後のスマートフォンやタブレット競争、またその勢力地図に大きな影響を与える布石となりそうなのが、サムスン電子の「GALAXY S4」を、SIMロックフリー、ブートローダーアンロックで“素のアンドロイド”を搭載した機種を、グーグルが発売することです。サムスンと組んだことは当然のようでもあるのですが、意外に感じました。

一般のユーザーの人たちにとっては、SIMロックフリー、ブートローダーアンロックにして、“素のアンドロイド”を提供することは、あまり関係がないかもしれませんが、対アップル戦略や今後の市場育成にとっては重要です。iPhoneやiPadがいわばアップルが整合性のある世界を提供しているの異なって、アンドロイドの最大の欠点は「断片化」の問題があるからです。

アンドロイドは各メーカーがそれぞれの特徴を出すためにOSをカスタマイズしています。さらに機種によってもそれが異なっています。グーグルがOSをバージョンアップしても、各メーカーがテストし、確認してからでなければ最新のOSがユーザーに届きませんし、結果として、そのタイムラグが大きく、しかもそれぞれのメーカーが多くの機種をだしているのでよけいです。結果として、異なるバージョンのOSが同時並行して残ってしまうばかりか、機種によってはバージョンアップできるとは限らないし、アプリを開発する側にとっても悩ましいところです。シームレスに機種間をつなげるというのも場合によっては制約されてきます。それがアンドロイドが抱えている「断片化」のアキレス腱です。

アンドロイドが出荷台数では圧倒し始めているのに、アプリの利用では、いまだにアップルと差が付いている原因のひとつなのでしょう。またその欠点はマイクロソフトが切り込めるチャンスともなっています。

グーグルは、モトローラ買収によってこの問題の解決をはかろうとしましたが、あてにしていた特許収入も、結局は捕らぬ狸の皮算用状態に終わり、また販売台数も低迷し、スマートフォンではサムスン一人勝ちの状況で、むしろノキアが採用したWindowsPhoneの躍進のほうが目立っています。

スマートフォンやタブレット市場の競争が複雑なのは、OSとOS、またプラットフォーム間の競争だけでなく、ハードで見れば、同じアンドロイドといっても、そのなかでのメーカー間競争があります。さらにアンドロイド経済圏のなかでどこが支配力をもつのかでせめぎ合ってきています。盟主がOSを握っているグーグルなのか、ハードで30%のシェアを超え、一人勝ちといってもいいサムスンになるのかです。
それはアンドロイドの経済圏での影響力だけでなく、得られる利益にも影響してきます。また通信キャリアも独自のサービス、またコンテンツやアプリを売る動きにでているので、さらに競争関係を複雑にしてきています。

グーグルにとっては、たくさんのメーカーとの連合体制をとっていることは、機種のバリエーションを広げ、また各メーカーのマーケティングパワーを集積できることが優位に働いてきています。しかしそれは裏返せば、秩序が保てず、さきに触れた「断片化」のアキレス腱をかかえるハンディともなってきます。またサムスンのように独自のプラットフォームを持つ動きも起こり、GooglePlayとの競争も起こり始めています。

それを物語るように、アンドロイドの出荷数量のほうがiPhoneを圧倒し始めてきているにもかかわらず、GooglePlayでは、ダウンロードされるのは無料アプリが大半を占め、アプリや音楽コンテンツなどの販売額ではアップルがまだまだ圧倒しているのが現状です。

そして、数年先にはスマートフォン市場に大きな変化が訪れます。これまでスマートフォン市場を成長させてきたのは普及率の伸びでした。それが先進国では次々に限界普及率に達し市場が成熟してきます。
 
普及率で伸びるのは途上国市場で、先進国では、「買い替え」の需要と「活用」の需要に焦点が移ってきます。そうなるとユーザーをそれぞれのプラットフォームに囲い込む魅力があるかどうかになってきます。いくらシェアが高くとも、ユーザーの流出が多ければ、ポジションは極めて不安定になってしまいます。

だから安心して買い替えることとができる秩序、多くのアプリ開発企業を引き寄せるプラットフォームの安定性、それによって利用が広がっていく秩序をつくり、ユーザーをしっかりアンドロイドのプラットフォームに繋ぎ止めておくことがグーグルにとっては重要になってきます。そのためにはOSの「秩序」、プラットフォームの「秩序」の整備が欠かせません。

各メーカー間の競争によって、OSやプラットフォームが自然発生的に拡散し、コントロールが効かなくなるのではなく、統合させる力が欲しい、だからNexusで“素のアンドロイド”による標準を示すことと、GoogelPlayの強化で統合をはかろうとしているのでしょう。無秩序な戦国時代になることだけは避けたいはずです。

今回驚いたのは、そのNexusスマートフォンをサムスンから出すことです。おそらくモトローラで失敗し、製造や販売の力のある台湾のAsus(アスース)と組んでタブレットPCで一定の成功を収めたことが影響したのでしょう。

しかし、そういった意図が見えていて、独自のOSやプラットフォームづくりにチャレンジしはじめているサムスンが裸の状態にして「GALAXY S4」を提供するというのもまた微妙なところです。出荷台数を伸ばすためには、なんでもありということでしょうか。それが台数だけでなく、サムスンのブランド力をさらにあげ、アンドロイド間の競争で更に優位に立てるということなのか、グーグルとはまだまだ仲良くやっていきたいということでしょうか。

噂が絶えないアップルの動きも加え、モバイル市場はどんな展開になってくるのでしょうか、また目が離せなくなってきました。