柔道が女子柔道強化選手へのパワハラ問題から、日本スポーツ振興センターからの助成金の不正流用疑惑や上納金問題、さらに全日本柔道連盟の複数の理事が、実際には指導していない選手への強化指導費名目で、数百万円の助成金を受給していたという疑いまで飛び出してきました。武道といえば、この間テレビで流れている剣道の指導者の暴行シーンも含め、武道も地に堕ちたものです。さぞかし忸怩たる想いで眺めている武道家の人も多いと察します。
多くのスポーツは科学的なトレーニング方法を導入して大きく変わったのですが、それに遅れた競技の典型が柔道でしょう。相撲も同じでした。そして進化による変化がないところでは、古い体制に巣食う人々によって運命共同体としてのムラ社会が生まれ、そのムラ社会による支配体制が築かれていきます。閉ざされたムラ社会では、古い考え方や体質が維持され、さらにそれが進化を阻む悪循環も起こってきます。
男子無差別級で金メダルをとった石井慧選手が日本の柔道を去ったのも、日本の柔道ムラの体質に嫌気をさしたからでしょう。石井慧選手の当時の発言の端々に感じたことです。だからこそ4月の全米柔道体重別の無差別級に出場し、2016年に開催されるリオ五輪での米国代表入りを狙う意欲を示しているのでしょう。
石井1回で1本!明日香に捧げた/IGF - 総合格闘技ニュース : nikkansports.com : そしてやがて内々のルールが社会規範や常識とは外れていても気づかず、金銭をめぐっても不正の温床となってきたも発覚してきたということだと思います。
そして全柔連は、指導の場での「禁止用語集」を細かく規定し、指導者に対して徹底するということですが、それは対処療法に過ぎず、根本的な指導に対する考え方を変えない限り、それはいつまでたってもきりがありません。マネジメントとしてはあまりにも拙速さを感じます。
しかしそういった体罰式の指導がいまだに残っているのは、体罰を容認する人や、体罰と愛のムチの違いは難しく線引をしないといけないという考え方を持っている人が少なくないことも原因のひとつでしょう。桜の宮高校の父兄もそうでした。しかし線引をいくら規定しても無駄なことだと思います。根本的なスポーツ指導の考え方、いわばパラダイムを変えないとやはりきりがないのです。
線引するとすれば、実力行使は、その選手や生徒に危険がある場合、他の選手や生徒に危害をおよしかねない場合、また妨害行為があった場合ででしょう。選手や生徒を育てる上では必要のないことです。
スポーツに必要なのは、基礎体力、運動能力などの身体能力、また技術力だけではありません。さらに知識や理解力、また判断力といったスポーツ脳も求められますが、それに加えて求められて来るのが、高いモチベーションなどのメンタリティです。
しかし、高いモチベーションやメンタリティを育てるのは、しっかりした目標意識を持つこと、そしてなによりも自らへの自信であり、高いハードルにチャレンジする勇気です。
それは、体罰やいわゆるスポ根ではまったく役に立たないばかりか、かえってほんとうの意味でのモチベーションを下げます。また恐怖心で育ったハートは厳しい戦いのなかでは無力です。スポ根で育った選手はいざというときには根性すらないのです。実際かつて日本はさまざなま国際試合でその惨めさを味わい、さまざまなスポーツ界がそれを学んで卒業してきた問題でした。
日本の柔道が国際舞台で通用しなくなり、男子はメダルすらなかなか取れなくなってきたこと、それが柔道に巣食ってきたムラ社会が、トレーニング方法などで柔道の進化を阻んできたことに原因があるとすると、指導に関する根本的な考え方や指導方法の抜本的な改革を行わなければ柔道の日本の再建は難しいといわざるをえません。
いずれにしても、死亡事故があまりに多いというだけでなく、健全な指導者育成の思想や育成方法を柔道界が再構築しないかぎり、文部科学省は、学校教育の場から柔道を認めるべきではありません。とんでもない指導で育った選手はやがて再び同じ間違いを繰り返します。柔道界に対しては、それぐらいの指導を行わないと、柔道日本は変われないのではないでしょうか。
全柔連の体制だけでなく、指導思想や指導者育成の大胆な改革を行なって、再び柔道ニッポンを再建してもらいたいものです。

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