映画館離れが起こってきているといわれています。原因はさまざまでしょうが、Garbagenewsが紹介しているライフメディアのリサーチバンクの映画に関する調査結果を見れば、映画館に行かない理由として「自宅で見るほうが楽」(50.9%)、「入場料が高い」(48.2%)の2つが突出しています。

そのとおりでしょう。おそらく、液晶テレビの大型化や、またレンタルビデオ料金の低価格化、さらにYoutubeなどの動画サイトの登場なども影響しているのでしょうし、日本の映画館の入場料金の平均は1200円を超えていますが、アメリカでは500円程度で、フランスも800円程度と海外に比べて高いことも事実です。
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一般社団法人日本映画製作者連盟の日本映画産業統計で、入場者数の推移を見ると面白いことがわかります。2001年に入場者数が急増しています。おそらく304億円の大ヒットとなった「千と千尋の神隠し」が貢献したのでしょう。そして2010年に再び入場者数が増加していますが、こちらは「アバター」や「アリス・イン・ワンダーランド」に代表される3D映画が牽引したのだと思います。しかし、3Dの液晶テレビが失速したように、映画の世界もその反動があり、また大ヒット作品がでなかったこともあって再び失速します。3Dには無理があると言っていたのですがやはりその通りになりました。
 
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昨年は少し持ちこたえて、入場者数が増え、映画館ビジネス復活の兆しかと思わせます。しかし、市場はしばしば間違ったシグナルを送ってくるものです。入場者数が増えたのは公開本数が増えたためで、公開された映画一本あたりの入場者数で見れば、2000年以降最低であったことがわかります。確かに映画館に行っても空いていて、いつもいい席で観ることができるのはいいとはいえ、ビジネスでみれば決して健全な話ではありません。

映画館のビジネスは、カテゴリーを超えた競争にさらされています。なにで時間を楽しく過ごすのかの選択肢は増えてきています。そうなってくると「価値」対「価値」の競争です。とくに値ごろ感での競争になってきます。映画館で観ることの楽しみへの期待や満足を上げるか、価格を下げるか、あるいはその両方ででしょうが、さてどこに向かって行くのでしょうか。

邦画と洋画の興行収入では2006年以降はシェアが逆転し、邦画のシェアが高まり、2012年には、65.7%を占めるまでになっています。ひとつはハリウッド映画が面白くなくなったこともあるでしょうが、そのかんじんの邦画もかつてのスタジオ・ジブリの作品や踊る大捜査線のような大ヒットも生まれなくなっていて、いやはや映画館ビジネスも大競争時代に生き抜く強みを再構築しないと大変なことになっていくのかなあと感じてしまいます。あとは景気頼みでしょうか。映画のビジネス界隈にはマーケティングの香りがほとんどないところも厳しいところです。