NTTドコモが、ブレット端末「dtab(ディータブ)」を破格値の9975円で売り、自社で展開するネット通販サービス「dマーケット」の拡大をはかるということらしい。一見は、アマゾンがKindleを、また楽天がkoboを低価格で売って電子書籍販売を伸ばそうとしている戦略と重なり、こちらの記事のなかでアナリストの方が「方向性は正しい」と評価されています。ほんとうにそうでしょうか。
北にどんどん向かえばやがては北極に行きつくという意味では、「方向性は正しい」のかもしれないですが、それを車を使って行き着こうとしても無理な話です。友人の経営学者が「戦略を描くことは簡単だけれど、それを実行に移すことは難しい」と言っていたことが思い浮かんできます。

ゴルフで思い描いた攻め方通りにボールが飛べば、すべての人がシングルプレイヤーになるのですが、実際には、ボールがスライスしてしまったり、落ちたところがバンカーでボールが埋まってしまっていたり、さまざまな紆余曲折があるものです。つまり戦略は正しく描けても、それを実行に移す力があるかどうかです。
そうそう思い出しました。今はゴルフはやらないのですが、昔、キャディさんがフェアウェイの右手の木のあたりを狙うようにアドバイスをくれたときのことです。思わず「それは私に言っても無駄なのでボールに言って」と返答したことを思い出してしまいました。

NTTドコモもその危うさを感じます。ネット通販では、日本では楽天の国内ECの取扱高(楽天市場や書籍などを含む)が1兆4460億円、アマゾンの日本での売上高が、約7300億円ですが、それに比べるとNTTドコモのネット通販は規模においても、取り扱い商品数においても、まだまともに競争できる規模ではありません。
先ほどの記事ではドコモのdマーケットが取り扱う「商品数は約8万点にとどまり、日本では5000万点を超えるアマゾンの足元にも及ばない」状態です。

通信キャリアとしてはNTTドコモは契約者数でトップの座を占める王者ですが、コンテンツの販売はiModeで築いたプラットフォームはもはや武器にならず、ネット通販サービス「dマーケット」は更地から築いていく事業で、ライバルと比べればまだまだ弱者です。

弱者は弱者としての攻め方があると思いますが、「dtab」を軸としてやろうとしていることは、はたして弱者の戦法としてかなったものかどうかです。

確かに、クアッドコアCPUを搭載し、10.1インチの大型ディスプレーという仕様が使いやすいものかどうかは別にして、9975円は他のアンドロイドのタブレットとは競争力のある価格です。というかダンピングではないのかとすら疑わせます。

「端末の販売だけでは赤字になる」とドコモの幹部の人が漏らしているそうですが、そうだと思います。しかもWi-Fi専用というのだから、回線使用料で回収することもできません。

しかも、「dtab」そのものは価格の魅力で売れたとしても、いったんユーザーの手に渡ってしまうと、ユーザーの人たちは自由なインターネットの世界に拡散していきます。アンドロイドである限り、そこでは楽天を利用することも、アマゾンを利用することも、さらにGooglePlayを利用することも、なんでもありのはずです。他のマーケットプレイスの利用を制限することはなにかできるのでしょうか。

いくら「dマーケット」に便利なアプリをプリインストールしていても、「dマーケット」に誘導するユーザーインターフェイスを提供しても、どこを利用し、なにを購入するかはユーザーの手に委ねられます。つまり、「dマーケット」そのものが競争力を持っていなければ、「dtab」による赤字を埋めることはできません。

そう考えると、方向性が正しいとしても、ライバルがひしめく市場のなかで「dマーケット」が持つ強み、競争力はどこにあるのかという話になってきます。

それが伝わってこないところが残念なところで、結局は、毎月のケータイ料金と一緒に支払いができることと、ドコモポイントとの交換ができることぐらいのメリットしかありません。メリットがあるとすれば、クレジットカードを持たない人たち、クレジットカード利用に拒否感がある人ぐらいでしょうか。

方向性が正しいかどうかよりも、ライバルのひしめく戦場でドンパチの戦をするよりは、ユーザーが新しい体験を楽しめるサービスに焦点を当てて、新しい市場を拓いていくことが結局はサービスの魅力化になってきます。

エイベックスとの合弁会社のBeeTVが提供するdビデオで、ソフトバンクやKDDIとスマートテレビ競争に励んでいただき、切磋琢磨していけば、グーグルやアップルが狙うリビングへの進出もでき、やがて放送局をも動かすパワーになってくるのではないでしょうか。

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