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新しい技術が生まれてくると、なにかそこに夢を描きたくなるのは自然なことです。そういった夢が、想像力をかきたて、また新しい発想を生みだしてきます。
ただ夢を描くことと、夢を実現する間には距離があることも現実です。すぐさまできることもあれば、夢を実現するためにはいくつものハードルを超えなければならないこともあります。たとえば、電気自動車。実用化にはまだまだ超えなければならないイノベーションのハードルが高いことは、すでに何度か書きました。なにもかもが半導体のような速度で性能があがっていくムーアの法則通りにはいきません。

このブログでも紹介した3Dプリンターで、相馬瑠美さんという方がDigital Experience!で、「3Dプリンタ−スマホを家でプリントアウトする日」というタイトルで3Dプリンターを取り上げているのもちょっと暴走しすぎかなと感じます。

3Dプリンターは、産業用では、試作品や金型製作ですでに実用化されていますが、そちらは価格が高いのでとても普通の人が買えるものではありません。しかし、PCから3次元の立体を出力・造形することができる、価格の安い3Dプリンターが登場してきたことで、一般の人でも使いこなす知識があれば、使えるようになってきています。


3Dプリンターは、アクセサリーとか、なにかの部品とか、スマートフォンのケースとか、ちょっとしたものならつくれます。こちらのサイトで、3Dプリンターのユーザーが創意工夫でつくったものを購入することもできます。可愛い作品もあるので楽しんでみてください。こんなことまでできるようになってきたということをぜひ頭の片隅に置いておいておけばと思います。

しかし、相馬さんが、どなたかの言葉を引用して「たとえばスマホのようなプロダクトを、内部の電子回路と外装パッケージの区別なく、現物そのまま出力・造形することが可能になる」と書かれていますが、それは無理な話で誤解を生みます。

スマホは、残念ながらケースは3Dプリンターでつくることができても、本体そのもの、そのなかにぎっしり詰まっている部品はつくることはできません。なぜなら、どの部品ひとつとっても、それらをつくるための高度な環境や設備、また技術の組み合わせを必要とするからです。カタチにすればいいというものではありません。

3Dプリンターは、「できること」を広げ、また広げていくでしょうが、3Dプリンターでは「できない」ことも多いのです。たとえば、複雑な試作品のモデルや、精度を求められる金型製作などでも、いくら産業用の3Dプリンターがあっても、いまなお、職人の「巧みの技」がなければ満足のいくものになりません。

しかし、相馬瑠美さんが書いておられるように、3Dプリンターはビジネスを変える可能性を持っています。価格の安い3Dプリンターが普及すれば、望みのままのデザインを、カタログで選んだり、オリジナルデザインをお店にオーダーしてつくる「多品種少量生産」の新たなビジネスも生まれてくるのでしょう。

流通のなかでこれまでになかったサービスが生まれてくる可能性があるだけでなく、商品開発に、まったくその分野の門外漢の素人が参加してくる可能性もあります。オートバイのデザイナーが、時計の試作品をつくって、それを商品化するということも起こってきます。普段は営業職をやっていても、休日に3Dプリンターでつくったものが、商品化されてくることもありえます。それらは「商品開発の民主化」の流れをつくりだすだろうと注目されているところです。

イノベーションが起こると、それで世の中がどう変わっていくのか、どのような社会やユーザーに新しい価値をもたらしてくれるのか、またそれが社会に普及していくためにはどのような超えなければならないハードルがあるのかを想像していくことは楽しくもあり、やわらかな発想を鍛えるにはいいトレーニングになるのではないかとも思います。