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テレビ東京の『ガイアの夜明け』で、「町工場からお茶の間へ!〜職人たちが大ヒット商品を生んだ」という番組をやっていました。それぞれ、自ら商品を開発し、自ら販売をはじめ成功した事例を取り上げたものです。
いずれも「ものづくり」という、どうしても製造工程に偏りがちな視点では説明できない、もうひとつ上流の工程にチャレンジし、さらに下流としての販売先も変え、ビジネスそのものが変わった事例でした。
奥山さんという方がブログで、ともすれば、日本では、イノベーションというと、「具体的なハードウェアの発明」と安易に考えてしまう風潮があって、そこにのめり込んでしまうと、もっと上のレベルの変化に飲み込まれ、コントロールされてしまうと書かれていますが、とても大切な指摘だと思います。

イシガキ 鉄鋳物なのに軽いフライパン26cm
番組で取り上げられた三重県にある錦見鋳造は下請けの部品工場でした。つまり製造工程だけで実績を積んできた会社です。その会社が、リーマンショック以降に仕事が激減し、薄くて軽い鋳物技術を生かした家庭用の製品はないかとアイデアを社内にもとめ、たどり着いたのがフライパンでした。浅く考えてしまうと、それも「ものづくり」だとしてしまう人もいるでしょう。しかし、この会社は、それまでは注文に応じて製造していたことから、「商品を自ら企画する」ことを始めたのです。もっといえば自らリスクを負ったのです。しかも売り先も、企業からネット販売のほか、伊勢丹や東急ハンズなどに変えたということは、ビジネスそのものが変わったのです。
もし「ものづくり」ということだけにとらわれていたら、きっとより元請けに喜ばれそうな、さらに薄くて剛性の高い鋳物技術を徹底して追求していたのかもしれません。
【エンジニア】 ネジザウルスGT ねじ外しペンチ (PZ-58)

大阪の中小企業「エンジニア」のケースも同じです。確かにブレークしたのは、「ネジ・ザ・ウルス」というどんなネジでも、溝が潰れたネジでも外せる工具です。やはり「ものづくり」だという人もいるかもしれません。しかし、「工具店やバイク店など向けの業務用工具」からDIY市場にビジネスのターゲットを変え、ビジネスそのものも変わったのです。社長さんが店頭で、商品をキャラクターにした着ぐるみを着てお客さんに説明したり、海外のユーザーに話を聞きに回っていらっしゃった姿は、ビジネスそのものが変わったことを象徴しています。

TRACE FACE KNIT WEAR(WH)【トレースフェイスニットウェア/セメント/CEMENT PRODUCE DESIGN/M.M.Yoshihashi/湯呑/カップ】【cc-wh】【楽ギフ_包装】【楽ギフ_のし宛書】[06391
「ものづくり」をさらに超えた事例だと感じさせたのは、大阪のデザイン会社が地場の瀬戸の陶器の型職人の方とのコラボレーションでつくった編み物の模様と風合いをもった器や照明のシェードです。この職人さんがデザイン会社CEMENT PRODUCE DESIGN代表の金谷代表と出会って、注文に応じて「陶器の型」をつくる仕事から、型をつくる技術を生かして、デザインや陶器の暖かみや風合いを生み出す仕事に進化したのです。

日本は、世界のビジネスが、デジタル化やグローバル化という産業革命によって大きく変化してきたにもかかわらず、「ものづくり」という罪作りな神話にとわられ、視点を狭め、結局は多くのビジネス分野で競争力を失い、また産業の高付加価値化に失敗してきました。情報家電がその典型例です。

大切なことは、ビジネスが進化すれば、より高度な「ものづくりの技術」も求められてくることが普通ですが、「ものづくり」の技術さえ極めれば、ビジネスの進化が起こるとは限らないことです。

確かに、高度な基礎技術の場合は、ユーザーの利用方法や生活文化、市場そのものまでをも一変させるさせることがあります。しかし、基礎技術の場合も、それを応用するビジネスが生まれてこそ生きてくるのです。しかも、基礎技術の大きなイノベーションは、そうそう簡単に起こってくるものではありません。

「ものづくり」を極めればビジネスが成功するという神話は工業化の時代に日本に根付きましたが、いまやそれが呪縛となり、ビジネスチャンスを広げることの足かせになってきているように感じます。日本は人口が増えない、いや減少していくので、追求すべきは産業の高度化と高付加価値化ですが、それを「ものづくり」だけで達成しようとでもいうのでしょうか。それは下手をすると日本の産業の総下請け化にもなりかねません。
たしかに、iPhoneやiPadにも日本製品は多く使われています。しかし製品から得られる利益からすれば、ごくわずかな利益しかそこからは稼げないのです。

例えれば、「ものづくり」に偏った考え方は、ヒットにしろ、ホームランにしろ打撃の技術を追求して、野球で勝とうというのに等しいのです。守備もあれば、どのような作戦で行くのか、メンバーをどう組むのかといったことでも優れていなければ勝てません。それよりも究極は、夢を感じてもらえる、またゲームで感動し、楽しんでもらい、球場にも足を運び、またテレビで観てもらえるファンを増やすことのはずです。そうなるとチームのマネジメントやプロ野球そのもののマネジメントの進化が求められてくるはずです。

もうそろそろ「技術」というのも「ものづくり」というのもやめませんか。そうすれば視点がぐっと広がってくるはずです。また、そうしたほうが「技術」も「ものづくり」も日本に残るのです。なぜならそれもイノベーションを支えるチームの大切な一員だからです。
 
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